神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

天使…。

…聞き覚えがある。

イーニシュフェルト魔導学院にいただろ。天使。

ベリクリーデの中にいる神様、聖神ルデスに仕える三大天使。

その三大天使の下に、更に七人の大天使がいて…。

そのうちの一人が、イーニシュフェルト魔導学院に来た…。

「…あんた…本当に天使なのか?」

「あぁ」

頷くなり、クロティルダは隠していた背中の翼を展開させた。

うわっ。

「ほ…本物か、これ…」

「ふわふわもちもち〜」

おい、ベリクリーデ。

仮にも天使を名乗る者の羽根を、勝手に触るんじゃない。

つーか、ふわふわはともかく、もちもちって何だよ。絶対そんな感触じゃないだろ。

あぁ、もう。ベリクリーデが変なこと言うもんだから、気が抜ける。

でも…羽根があるってことは、本当に…。

「…じゃあ、リューイの親戚か?」

イーニシュフェルト魔導学院に来た天使。

あいつは確か、そんな名前だったよな?

「リューイ…。第4天使サリエルのことか」

「…やっぱり知ってるのか?」

「親戚ではないが、同僚だ」

とのこと。

…やっぱり…。

「…お前ら天使は、そんな無闇矢鱈に地上に降りてくるのかよ?」

天使なんだろ?

だったら、天界で大人しく、俺達を高みの見物してろよ。

何で降りてくるんだ。

「そんなつもりはない。俺はただ…」

「…ただ?」

「…我が姫を守りたかっただけだ」

「…姫…?」

って誰のことだよ、と思ったが。

クロティルダの視線の先には、ベリクリーデがいた。

…姫?こいつが?

「…こいつが姫…!?」

「お姫様だよ。えへへ」

照れるな。

こんな落ち着きのない、おっちょこちょいの、でっかい幼稚園児が?姫?

「何処の世界のお姫様だよ、お前は」

「俺がそう呼んでいただけだ。彼女がまだ…ベルーシャだった頃に…」

「…ベルーシャ?」

俺が聞き返すと、クロティルダは気まずそうに、視線を逸らした。

「…すまない。失言だったな」

「…」

「俺はただ、今の彼女のことを傍で見守るだけだ。お前達の邪魔をするつもりも、危害を加えるつもりもない」

…何を勝手なことを。

そんなの、信用出来るはずが…。

「ジュリス・レティーナ。お前が悪人でないことは知っている。それどころか…我が姫のことを、ずっと守ってくれていたことも」

「お前が、俺の何を知ってるって言うんだよ?」

「知っている。…ずっと見ていたのだから。『裁定者』として。彼女の忠実な騎士として」

「…」

「その上で、お前は今の彼女に相応しい」

…なんか、よく分からんが。

すげー上から目線で褒められているらしい、ということは分かった。

…全然嬉しくないんだが?