神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

改めて。

「…クロティルダ、つったな。あんた」

「俺のことか?」

お前だよ。他に誰がいるんだ。

俺のことなんて興味ないとばかりに、こちらを見向きもしなかったクロティルダが。

俺が話しかけるなり、ようやくこちらに視線を向けた。

…イラッ。

何でこいつ、こんな偉そうな態度なんだ?

「お前、誰だよ」

「…」

俺が聞いてるのに、そいつはじっと俺のことを見つめ。

そして、呟くようにこう言った。

「ジュリス・レティーナ…。『魔剣ティルフィング』の使い手」

「は?」

「ルティス帝国の地下組織、『オプスキュリテ』の頭目にして、聖戦の時代を生き抜いた稀少な魔導師。『黎明の魔法使い』…」

「はぁ…!?」

…あんた、何でそんなことを。

ベリクリーデが喋った?いや、そんなはずはない。

『オプスキュリテ』のことなんて、ベリクリーデにだって話してないのに…。

こいつ…本当に、何者なんだ。

「お前…何で知ってるんだ」

「本に書いてあった」

…本…?

「気にすることはない。お前が気づいていなくても、俺はずっと、お前のことを見ていた」

「は…?」

「お前が悪い人間じゃないことも知っている。だからこそ、我が姫の傍らに居ることを許している」

「…」

…ふーん、成程。よく分かった。

…こいつが、超危険人物だってことがな。

「…ベリクリーデ、こっちに来い」

俺はベリクリーデに、ちょいちょい、と手招きした。

「ほぇ?」

「良いから、こっちに来るんだ」

「うん、分かったー」

ベリクリーデは疑うことを知らず、とてとて、とこちらに寄ってきた。

そんなベリクリーデを、俺は片手で抱き締めた。

「ふぇ?」

きょとん、とするベリクリーデ。

だけど、俺は至って本気だし、正気だ。

「ベリクリーデ、こいつに近づくな」

「…??」

「こいつ、このクロティルダって男だよ」

「…?何で?」

何で、じゃないんだよ。

どう考えてもおかしいじゃないか。こいつの言動、何もかも。

「お前が何者かは知らないがな…。俺はたった今、お前を敵だと認定した」

「そうか」

俺は杖を向けて、そいつに言ったのに。

少しも狼狽えていない。涼しい顔しやがって。

この不遜な態度。馬鹿にされてるみたいでめちゃくちゃ腹立つ。

俺のことなんて眼中にない、ってか?あぁ?