神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

二人を見つけたシルナは、地獄に仏とばかりに。

「あぁっ!ナジュ君、天音君、助けてーっ!」

簀巻き状態でジタバタしながら、ナジュと天音に助けを求めた。

「ど、どうしたんですか、学院長先生…!?」

天音は、慌ててシルナに駆け寄ってきたが。

俺達の心を読んで、すぐさま事態を把握したらしいナジュは、半笑いだった。

そして、一言。

「今日も愉快なことやってますねぇ」

…お前な、他人事だと思いやがって。

愉快なことやってますね、じゃないんだよ。

何も愉快じゃないわ。

こちとら、おっさんに泣きつかれてるんだぞ。

「イレースちゃんがね、イレースちゃんが。私の宝物を捨てようとするんだよ〜っ!」

「何が宝物ですか。全部ゴミです」

「酷い!」

セミの抜け殻みたいなもんだよ。

ちっちゃい子にとっては宝物でも、大抵の大人にとってはゴミでしかない。

つーか、チョコレートの包み紙だの、ケーキのリボンだの…。そんなもん取っとくなよ。

ゴミじゃん。

「あの…羽久さん、どういうこと…?」

天音が、俺に説明を求めてきた。

俺に聞かないでくれ。と言いたいところだが。

そういう訳にもいかんわな。

「…さっきから、この段ボール箱の中身を捨てろって言ってるんだが…」

「駄目!絶対!シルナの宝物!」

などと主張しており…。

「はぁ…何が入ってるんですか?」

「しおり!」

へ?

「ほら、遠足のしおり」

何故か自慢げなシルナ。

段ボール箱の中には、干からびてパリパリになった紙の冊子。

それらのうち、一冊を手に取ってみると。

掠れた文字で、かろうじて読み取れた。

遠足のしおり、と書いてある。

…。

…いつの?

「凄い年代物ですね。古代の歴史書みたいな」

歴史書=遠足のしおり。

「…何なんです、これは」

「学院創立時から、毎年秋に行ってた遠足のしおり。毎年分、ぜーんぶ取ってあるんだよ」

えっへん。

おっさんのえっへん顔ほど、気持ち悪いものもあんまりない。

この冊子…全部、歴代の遠足のしおり?

おもむろに、一冊を手に取って、パリパリのページを開いてみると。

古ぼけたインクで、集合時間だの、持ち物リストだの、バスの座席表だのが記されていた。

うわー。めちゃくちゃ懐かしい。

これ、学院創立時から全部残ってるの?毎年?

シュニィとか、アトラスとかが在学中の頃から?ずっと?

よくもまぁ…全部取ってたものだ。

「…全部捨てなさい」

「あぁーっ!」

イレースは、段ボール箱の中身をまるごと、ゴミ袋に叩き込んだ。

…ま、そうなるよな。