神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

生徒との思い出の品だけは、取っておくことを許されたシルナだったが。

それでも、倉庫の中は不必要なものでいっぱいだった。

「何です、この気持ち悪い布切れは」

「そ、それは!」

段ボール箱いっぱいの、色褪せたボロ切れみたいなのが出てきた。

…何これ?

「大事なものなんだよ!これはずっと前に、学院の文化祭で行われた演劇会で使った、生徒の手作り衣装…」

何でそんなものまで、後生大事に取ってあるんだよ。

「捨てなさい」

容赦なく、ゴミ袋行き。

「酷い!また使うかもしれないのに!」

物を捨てられない人のあるある台詞、筆頭。

使うことがあるかもしれない=そんな機会は永遠に来ない。

「こんなボロボロに朽ちた布切れを、どうやって再利用すると言うんです。雑巾にもなりません」

イレースの毒舌が炸裂。

朽ちた舞台衣装(?)は、残らずゴミ袋へ。

…それだけではない。

「何なんです、これは」

大きな段ボール箱を、まるごと5つも発見。

倉庫の中で、かなりのスペースを占領してしまっている。

「あっ!そ、それは…!」

何やら覚えがあるらしいシルナ。

「必要なものなんだよ、それは!凄く大事なの!」

焦って、必要性をアピールし始めた。

…怪しい。

イレースの鋭い眼光が、きらりと光る。

「調べます」

「あぁっ!やめて!」

イレースにかかったら、見逃してもらえる、なんてことは絶対に有り得ない。

経年劣化のせいで、ガピガピになったガムテープを剥がすと。

段ボール箱の中から出てきたのは、大量の冊子。

…これは…。

「何です、これは。説明しなさい」

「す、す、凄く大事なものなんだよ。学院の経営に関する、重要な書類、」

「嘘をつくんじゃありません。そういう本当に重要な書類は、私が鍵付きの金庫に保管してあります」

…シルナ、やめとけ。無駄だ。

その言い訳は苦しいぞ。…さすがに。

「思い出の品なの!凄く大事な!シルナの思い出の、」

シルナは、段ボール箱を庇うように前に出ようとしたが。

忘れるなかれ。

今のイレースには、超有能な助手が二人もいる。

「取り押さえなさい」

「はーい」

「ごめんね、学院長」

「ぴゃぁぁぁ!」

畑の肥料で買収されたすぐりと令月が、シルナをぐるぐる巻きにして捕らえた。

…あぁ…。学院長ともあろう者が、簀巻きに…。

「助けてー!誰か助けてー!」

簀巻き状態で、助けを求めて叫ぶシルナ。

…すると、そこに。

「何だか面白そうなことしてますね」

「な、何の声…?大丈夫…?」

通りすがりの、ナジュと天音がやって来た。

…どうやら、シルナの叫び声が聞こえたようだな。