神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…何なん?あいつ。

俺に対する風評被害を撒き散らしてんだけど。

「そう言われたら…ねぇ」

「運ばない訳にはいきませんよね…」

部下達は、恥ずかしそうな、しかし微笑ましそうな表情で頷き合っていた。

…あのな、言っとくけど。誤解すんなよ。

お前らが思ってるようなこと、俺とベリクリーデの間には、何もないから。

マジで何にもないから。何ッにもないからな。

ふざけんなよ。

「お前ら、ベリクリーデの妙な言い回しに騙されんじゃねぇ!」とか。

「それはベリクリーデの戯言だ!」とか。

「百億歩譲って本当だとして、この量はどう考えてもおかしいだろ!」とか。

言いたいことは、色々あったんだけど。

「あー…うん。…もう…アレだ。好きにしてくれ…」

考えることに疲れました。

…ともかく。

今は、ベリクリーデを捕まえることが最優先。

奴の首根っこを捕まえて、「何考えてんだお前!」と説教しないことには、俺は枕を高くして眠れない。

急いで、自分の部屋に向かうと。

あろうことか、ベリクリーデは俺の部屋の床に座って、大量の荷物に囲まれていた。

「こらっ!ベリクリーデ!」

「ふぇっ」

扉に背中を向けていたベリクリーデは、俺が大きな声で呼ぶと、びくっ、と肩を震わせた。

「びっくりしたー…。…ジュリスだ」

とぼけた顔で、こちらを振り向く。

この野郎。俺の部屋を散らかした挙げ句、この飄々とした態度は何なんだ。

もっと悪びれろ。

「あのなぁ、お前…!」

「おかえりー、ジュリス。おかえりー」

「あ、うん…ただいま…」

…って、何毒気を抜かれてるんだ、俺。

しっかりしろ。

「そうじゃなくて!お前そこで何してんだっ!?」

「ジュリスが帰って来るの待ってたの」

「何で!?」

「一緒に遊ぼうと思って」

そんな目をキラキラさせても駄目。

遊ばねーよ。

あと俺の部屋に置きっぱなしになってる着せ替え人形とビーズセット、自分の部屋に持って帰りなさい。

「一体何なんだ…?これは…」

「ジュリスが言ったんだよ」

「は?何を?」

俺は何をまた、地雷を踏んでしまったんだ?

いや違う。俺の発言を、ベリクリーデが勝手に、自分に都合の良いように解釈するのが悪いんだ。

「お給料、自分の欲しいものを買えって」

「それは…まぁ、言ったけども…」

「だから、ジュリスと一緒に遊ぶ為の玩具、いっぱい買ったんだー」

「…」

思わず、俺は言葉を失ってしまった。

…いや、言ったよ?俺。

「お前の給料なんだから、自分の為に使え」って。言いましたよ?

だから俺は、お前がその金を、酒に使おうが煙草に使おうが賭博に使う…のはやめた方が良いと思うけど。

何に使おうとも、それはベリクリーデの勝手だと思う。

むしろ、自分のお金を自分の為に使ったんだから、その点は進歩だと思う。

少なくとも、他人に配るよりはマシ。

…で、何でこうなった?