神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺は、一日中かけてバザールを回り。

ルーデュニア聖王国で待つ仲間達の為に、それぞれ土産を買った。

まずシュニィとアトラス一家には、伝統織物のタペストリーを。

子供達の為に、お土産用の菓子も。

クュルナやエリュティアや無闇、キュレムやルイーシュ達にも、名産の菓子を一箱ずつ。

名産のチョコ菓子も見つけたから、買っておいた。

イーニシュフェルト魔導学院に持っていけば、シルナ・エインリーが喜ぶことだろう。

それから…。

「…何にしよっかな…。あいつには…」

…あいつ、とは誰のことかお分かりだろう。

いかなる時でも俺の頭を悩ませる厄介者、そう、ベリクリーデのことだ。

実は会議中も、会議の内容そっちのけで、ベリクリーデのことが気になっていた。

あいつは、突拍子もないことをさせたら、右に出る者はいないからな。

落ち着きがないわ、ふらふらと出歩くわ、突然何の脈絡もなく、奇想天外な行動を起こすわ…。

具体的には、庭に巨大な穴を開けたり、野良犬を捕まえたり、大きな木によじ登ってたり…。

とはいえ、それらの奇想天外な行動も、詳しく話を聞いてみると。

一応、ベリクリーデなりの根拠があって起こした行動だったりするのだ。

…まぁ、木に登ってたのは、ただ松ぼっくりが欲しかっただけらしいけど。

何でも言葉通りに受け取るもんだから、そういうおかしな行動に繋がるんだ。

堪り兼ねて、「お前はもっと物事に柔軟に対処しろ」と言おうものなら。

うん分かった、と言ってバレエの練習を始めたこともある。

柔軟ってそういう意味じゃねーよ。

…駄目だ。思い出すだけで頭痛が。

俺、よくあいつの相棒やってるよ。自分で自分を褒めたい。

こんな時くらい、ベリクリーデのことは忘れて。

海外で羽根を伸ばして、ゆっくり過ごしたいもんだが。

そんな時でも、頭の中にふとベリクリーデの顔がよぎり。

「お土産、お土産」と期待いっぱいの顔でせがむ姿が、脳裏に浮かぶ。

…こうなったら、もう一人でのんびり、なんて出来ないじゃないか。

ズルいだろこれ。なぁ。

仕方なく俺は、ベリクリーデ宛のお土産を買う為に、バザールをうろうろするのであった。

何が良いのかねぇ、あいつは。

お土産、どんなものが良いか聞いてくれば良かった。

食べ物にするか、それとも装飾品にするか…。

あいつ、顔だけは。頭の中身はともかく、顔だけはそこそこ良いならな。

黙ってたら完璧。

だから、やっぱり装飾品の方が良いのかね。

…すると。

「おっ…」

あらゆる商品が、美しくディスプレイされたバザールを歩いていると。

キラキラとしたビーズのアクセサリーを売るお店を見つけた。

若い女性の売り子が、店番をしている。

俺は、吸い寄せられるようにその店に近づいた。

ベリクリーデのヤツ、光り物が好きだからな。

前世がカラスなのか、あるいは頭の中身が子供なのか。

多分後者だと思われる。

ともかく…このアクセサリー、ちょっと、良いかもしれない。