神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

全員で頭を抱えた、その時だった。

「…っ!」

「ど、どうした?」

吐月君が、突然弾かれたように、何もない空間に振り返った。

「『門』が…!」

「えっ…?」

吐月が呟くなり、何もないはずのその空間に、亀裂が走った。

知ってる。これ…時空の裂け目だ。

ビリビリと紙が破れるように、縦に裂け目が伸びて。

そこから、光に包まれた人影が二つ、現れた。

「ほぇー。ただいまー」

「ほら、ちゃんと戻れると言ったろう?」

「すごーい。直通便だ」

…こ、この間の抜けた声は。

「…ほぇ?みんな、何でいるの?」

時空の裂け目から現れたのは、きょとんとした顔をした…、

「べっ…ベリクリーデちゃん…!?」

「ただいまー」

おかえりー、ってそんな軽いノリで言っとる場合か。

何処にいたんだよ、何してたんだよ。

つーか、その頭につけてる花冠は何?

それに何より、後ろに、一緒についてきた…。

「…その羽根の生えたおっさん、誰?」

…コスプレ?コスプレイヤー?

良い歳して天使の羽根はダサいと思うから、そのコスプレはやめた方が良いと思うぞ。

それに、やたら豪華そうな蛇腹剣なんて小道具まで持っている。

それ、何?自分で作ったの?段ボールか何かで?

器用だなー最近のコスプレイヤーは。

…と、思ったが。

突然、その時空の裂け目から、「ギシャァァァ!」という叫び声が聞こえてきた。

「ぎゃっ!な、何だよ!?」

『門』に、バケモノが迫ってこようとしていた。

おい、なんかどっかで見覚えあるぞ、あいつ。

こいつら、冥界土産にバケモノを連れて帰ってきやがって…!

「ちょ、やば、ちょ、離れ、迎撃、迎撃!」

「ほう。今度はのっぺらぼうですか」

「冷静に観察しとる場合かルイーシュ!!」

良いから杖を出せ。『門』の向こうに押し戻すぞ。

こんなものが現世に降り立ったら堪らない。

…しかし。

「…ここまで追ってきたか。執念深い奴だ」

と言って、コスプレイヤーはくるりと振り向き。

『門』の裂け目に向かって、蛇腹剣を振り下ろす。

その名の通り、蛇のように伸びた刀身が、バケモノをぐさりと突き刺した。

「ギガァァァァ!」

「…在るべき場所に還れ」

コスプレイヤー君が、蛇腹剣を引き抜くと同時に、バケモノは『門』の奥に向かってふらり、と倒れ。

そのまま、ぷつん、と『門』が閉じた。

…一件落着。

…って、そんな訳があるか。