神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺達にゃさっぱり分からないことでも、ジュリスなら分かるかもしれない。

ベリクリーデちゃんと長い付き合いで、相棒であるジュリスなら。

…まぁ、ジュリス本人は、「こいつの世話なんて冗談じゃない」とか、いつも言ってるが。

あいつはツンデレだから。

「ジュリスがいてくれれば…とは思うが、そもそもジュリスがいたら、冥界に出掛けたりはしなかっただろうが」

と、無闇君。

確かに。

「それより俺はむしろ、ジュリスさんが帰ってきた時の方が恐ろしいですね」

我が相棒のルイーシュが、ぽつりと言った。

…え?

「どういうことだよ、ルイーシュ…」

「だって、今帰ってきたら…。自分のいない間に、ベリクリーデさんの行方が分からなくなった、なんて言ったら」

「…」

「…彼、どんな反応をするでしょうね?」

「…」

ようやく、ルイーシュの言わんとすることが分かった。

そして、その場にいた皆が、想像した。

「ただいまー」と帰ってきたジュリスに、

「あ、おかえりー。ところでベリクリーデが家出したよ」なんて言ったら。

ジュリスが、どんな反応をするか。

…普段怒らない奴を怒らせたらどうなるか。

そりゃもう恐ろしいことになる。…当然だろ?

…怖っ。

「…怒るだろうな。さぞかし」

「普段温厚な奴に限って、キレると怖いんだよ…。…シュニィとかさ」

「えっ、わ、私ですか…?」

まぁそれは冗談だけども。

冗談言ってる場合じゃねーんだわ。

「何とかしねーと。ジュリスが戻ってくる前に、ベリクリーデちゃんを連れ戻さないとやべーぞ」

かくなる上は、そうするしかない。

帰ってきたジュリス火山の噴火を防ぐ為には、ベリクリーデちゃんを連れ戻して。

「何事もありませんでしたよ?」みたいな顔で、白々しく口笛を吹いていなければ。

ジュリス火山の噴煙を、俺達が浴びる羽目になることになる。

「とはいえ…。さすがに、冥界まで追うことは…」

「そ、そういやそうなんだっけ…」

ベリクリーデちゃんの行き先は、冥界。

まともな人間が行ける場所じゃあない。

正直、俺も二度と行きたくないし。

それに、仮に冥界に足を踏み入れたとして。

あの広大な天変地異の世界で、ベリクリーデちゃんを探し当てることが出来るかと言うと…不可能に近い。

前回、マシュリ・カティアの心臓を探しに行ったのだって。

あれは結局、魂だけの存在となったマシュリ君が、俺達を竜の祠に導いてくれたから。

その手助けあってこそ、目的地に辿り着けたのであって…。

…何の手がかりもなく、闇雲にベリクリーデちゃんを探すことは出来ない。

「…どうすりゃ良いんだ、一体…」

寄りにもよって、冥界だなんて。

せめて現世なら、探しようもあったものを…。