神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

と、いうことがあった翌日。

その日は書類仕事ではなく、現場での任務だった。

ちなみに、ベリクリーデは一緒ではない。

今日の任務は、定期的に行っている近場での視察任務だったから。ベリクリーデは居なくても大丈夫。

さっさと任務を済ませ、ついでに今日はちょっと贅沢をして、外で食事をした。

…え?リッチに外食してないで、さっさと職場に帰れよ、って?

うるせぇ。

俺だって、たまには息抜きってものが必要なんだよ。

最近何かと、またベリクリーデ絡みで酷い目に遭わされたからな。

外にいれば、いつもの「ジュリス隊長!大変です!」からも逃れられるからな。

食後にしっかりコーヒーまで堪能してから、ご満悦で聖魔騎士団魔導部隊隊舎に戻ってきた。

…の、だが。

そこでは既に、修羅場が繰り広げられていた。




「うわっ…!何だこれ…!?」

「あっ…ジュリス隊長…」

隊舎の入り口には、部下達が何人も集まって。

何やら、大きな荷物を運んでいるところだった。

な…何?何の騒ぎ?

なんか…イベントの準備でもしてんの?

「お前ら…これ…何やってんの?」

俺、もしかして悠長に外食してる場合じゃなかったのでは?

と思ったが。

「あ、ジュリス隊長…」

やめてくれ。その、「ようやく保護者が戻ってきた…」みたいな顔。

ベリクリーデだな?ベリクリーデなんだな?

俺がいない間に、あいつ、また何かやらかしたんだな?

「その荷物は何だ?何処に運んでるんだ」

「そ、それが…その…ジュリス隊長のお部屋に…」

は?

…俺宛に、こんな大量の荷物が届くなんて聞いてないんだけど?

俺が通販で荷物を頼むとしたら、その時は出来る限り、隊舎にいる時間に届けてもらうようにしている。

再配達頼むとなったら、二度手間だろ?

けれども、今俺は何も頼んでいないはずだ。

…全然覚えがない。

覚えのない荷物が送られてきたら、受け取り拒否が基本だろう。

「…何なんだ…?その荷物…。俺、頼んだ覚えがないんだが…」

「あ、はい。これはジュリス隊長の荷物じゃなくて、ベリクリーデ隊長の荷物ですから」

は?

「…何であいつの荷物が、俺の部屋に運ばれてんの?」

テロ?何らかのテロ?嫌がらせ?

「えぇっと…ベリクリーデ隊長が、ジュリス隊長の部屋に運んで欲しいって…」

「…何だと…?」

あいつ、何考えてるんだ?

ふざけんなよ。つーかベリクリーデに「ジュリスの部屋に運んでー」と言われて、何で従ってんだよ。

「それは駄目だと思います」って言ってくれよ。

「あのな…。そこは断ってくれよ…」

と、思わず口に出したのが間違いだった。

「え?だって…ベリクリーデ隊長が…」

「ですよね…」

部下達は何故か、突然視線を逸らしてもじもじし始めた。

…何?その態度。

「何だよ。あいつ、なんて言ったんだ?」

「いえ、その…聞いたんですよ?ベリクリーデ隊長に…」

「えぇ…。『この荷物、何に使うんですか?』って…」

「そうしたら、その…ベリクリーデ隊長が、顔を赤らめて…」

「『今日の夜、ジュリスと一緒に遊ぶ為に使うの。…ちょっと怖いけど、でも、きっとジュリスも喜んでくれるから…』って」

「…」

…似てない声真似、どうも。