神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

聖魔騎士団魔導部隊隊舎では、そりゃもうおおわらわだった。

どのくらい大変だったかと言うと、

ジュリスとベリクリーデちゃんを除く、魔導部隊大隊長達が全員集まって、皆で青い顔をして…。

「そんな…ベリクリーデさんが、冥界に…」

「まさか、誘拐…ですか?」

「そ、そんな…!」

「でも、彼女なら有り得るのでは…?」

例え知らない人でも、「お菓子あげるよー」と言われたら、喜んでついていきそうな子だもんな。

「寄りにもよって、行き先は冥界か…。我々が容易に立ち入ることの出来ない場所に…」

めっちゃ分かる。

自分も冥界行ったことあるから。よーく分かる。

ぶっちゃけ、もう二度と行きたくない場所だったね。

優雅な旅行とは程遠い。

「一体、何の為に…。誰の意思で…」

「…」

それが分かったら苦労しない、ってヤツだな。

ベリクリーデちゃんも、もっとちゃんと書き置きを残してくれれば良かったのに。

しかも、その書き置きがまた、妙に怪文書なもんだから。

他に何か、隠されたメッセージがあるんじゃないかと。

ベリクリーデちゃんの手紙は、人の手から手へと渡り、違う読み方が出来ないかと皆で考えていた。

全部ローマ字に直してから読み直そう、とか。

縦読み、斜め読み、色々試したり。

やっぱり炙り出しじゃないか、とか。

さながら、難解な宝の地図を読み解くように。

ベリクリーデちゃんも、あれで不思議な子だからなぁ。

ボケーっとしてる時があるかと思うと、急に頼りがいのある大人の女性のように振る舞ったり。

しばらくすると、またボケーっとしたベリクリーデちゃんに戻って…。時折、妙に意味深なことを言ったり。

まるで、人格が複数あるみたいな。

羽久みたいだな。

だからこそ、余計にベリクリーデちゃんの意図が読めない。

「こんな時に、ジュリスさんがいてくれたら…」

何か読み取れるものがないかと、ベリクリーデちゃんの置き手紙を睨みつけるようにして見つめていたシュニィが。

悔しそうに、ポツリとそうこぼした。

…それを言うなよ。

ここにいるみんな、それはずっと感じている。

いかなる時でも言動が奇怪なベリクリーデちゃんの、唯一と言って良い理解者。

…と言うか。

自由奔放なベリクリーデちゃんに、唯一手綱をつけられる相手。

それが、あのジュリス・レティーナという男なのだ。

…あいつがいてくれたらな。今。

きっと率先して、そして血眼になって、ベリクリーデちゃんを探していただろうに。