神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ーーーーー…その頃、現世では。

奇妙な書き置きを残して、行方を晦ましたベリクリーデちゃんを探していた。

しかし、捜索は難航していた。

というのも、ベリクリーデちゃんの行方は、どうやら冥界だということが判明したからである。

ベリクリーデちゃんは、自分が何処に出掛けるのかについては、一切書き置きに残していなかった。

誰かと一緒なのか、それとも一人旅なのかも分からない。

ただ、冥界に行ったことは確かだった。

というのも、エリュティアが探索魔法を使っても、行方を辿れなかったから。

夜になっても帰ってこないベリクリーデちゃんを心配して、シュニィはエリュティアに、探索魔法の使用を依頼した。

ベリクリーデちゃんの行方を探して欲しい、と。

ベリクリーデちゃんが行方不明になっていたことに驚きつつも、エリュティアはすぐに、探索魔法を使って調べてくれた。

どうやらベリクリーデちゃんはその日、朝から裏庭に行って、松ぼっくりやらどんぐりやらを拾い集め。

その後、ジュリスの部屋でゴロゴロ過ごしていたようだ。

そこまでは、エリュティアの辿れる『痕跡』が残っていた。

けれど、問題はその後。

ベリクリーデちゃんの『痕跡』が、そこからぷっつりと途絶えているのだ。

まるで、神隠しにでも遭ったかのように。

ベリクリーデちゃんは、ジュリスや、イーニシュフェルト魔導学院にいる元暗殺者達と違って。

探索魔法の手がかりとなる『痕跡』を、上手く消すことが出来ない。

ついでに言うと、俺も無理だよ。

並の探索魔導師ならともかく。

エリュティアほどの探索魔法のプロに本気で探されたら、俺なんてあっという間にかくれんぼに負けてしまうだろう。

不器用な俺でさえ出来ないことを、更に不器用なベリクリーデちゃんに出来るとは思えない。

ベリクリーデちゃんが、『痕跡』を完璧に消して家出した、ということは考えにくい。

つまりベリクリーデちゃんは、『痕跡』を「消した」のではなく、『痕跡』が「消えた」、のだ。

ベリクリーデちゃんの意思に関係なく。

すると、考えられる選択肢は少なくなってくる。

更に、事態を聞きつけて現場にやって来た、吐月君。

召喚魔導師である彼の一言が、ベリクリーデちゃん失踪の行き先を、明確にした。

現場にやって来た吐月君は、はっきりとこう言った。

「『門』が開いた気配がする」と。

それが何を意味するのか、分からない俺達ではなかった。

『門』とはつまり、現世と冥界を繋ぐ境界のこと。

ベリクリーデちゃんはその境界を越えて、向こう側に行ってしまったのだ。

探索魔法で辿れる『痕跡』が残っていないのも、そのせいだ。

冥界では、探索魔法は使えないから。

これで、はっきりした。

ベリクリーデちゃんの行き先は、冥界なのだ。

…さて、そこまで分かったのは収穫だけど。