神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

だから。

「…もし、私が『必要じゃない』って言ったら、どうするの?」

私は、そう尋ね返した。

必要だよ、とか。必要じゃないよ、とか。

そんなことは私には言えない。言う権利がない。

あなたは私のものじゃないから。

「…もし…俺がもう必要でないなら、俺は潔く身を引こう」

…身を引く…。

つまり、お空の世界に帰って、もう戻ってこないってことだね。

二度と私には会わないってことだね。

…それは…。…嫌だな。

「…居なくなっちゃ嫌だよ」

長い長い時を経て、やっとまた会えたんだから。

それが、私の知らない私の記憶なのだとしても。

「必要か、必要じゃないか、じゃなくて…。…もう居なくなっちゃ嫌」

私は、ぎゅっとクロティルダの服の裾を握った。

「…」

「私は君の知ってる私じゃないかもしれない。けど、私は君が悪い人じゃないってことだけは知ってる」

ずっと一緒に居てくれたことも知ってるよ。

ずっと。

「だから、何処にも行かないで」

「…分かった」

クロティルダは、確かに頷いた。

そして、私の前に膝をついた。

「ならば、俺は今度こそ…自分の意志に忠実であろう。今度こそ、お前を守ろう。いかなる時でも、どんな選択をしようとも、お前の忠実な騎士であろう。…我が姫」

「…うん、ありがとう」

昔。今からずっと前。

私じゃない私は、かつて同じように、クロティルダととある約束を交わした。

だけど今の私は、そのことをまだ知らない。