神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

以下、原文ママ。

『せーまさしだんのみんなえ

おでかけしてきあす。さかしないでくだちい。

べしくしーで』

…だって。

ミミズがのたくったような字で、ほぼなんて書いてあるのか読めない。

「…何これ?怪文書?」

「暗号か何かですかね」

宝探し始めるべき?

あ、縦読みか?…違う…。…それとも炙り出し?

俺の知らない古代文字的な?

「字が汚くて、よく読めませんが…。多分これ、ベリクリーデさんのお手紙では?」

と、シュニィ。

あ、成程。

「そういや、あの子、字ぃ下手なんだっけ…」

そのせいで、書類仕事は全部自分がやらなきゃいけない、ってジュリスがぼやいてたもんな。

「じゃ、最後のこれ…『べしくしーで』っていうのは、もしかして『ベリクリーデ』って書きたかったんですかね」

「…自分の名前さえ間違えているとは…」

誰だよ。べしくしーでちゃん。  

「ってことは、それはベリクリーデちゃんの置き手紙か…」

「何でジュリスさんのベッドの下に…?」

「…さぁ…?」

普通置き手紙って、もっと分かりやすい場所に置くよな?

机の上とか。玄関入ってすぐのところとか。

何で、わざわざ見つけにくい場所に…?

ベリクリーデちゃんが何考えているのか、聞いてみたいね。

「置き手紙を残しているということは、事件性は低いように思いますが」

「そうでしょうか…。誰かがベリクリーデさんを攫って、ベリクリーデさんを模して置き手紙を残した、とも考えられるのでは…」

心配性のシュニィは、不安そうにそう言った。

うん。まぁ、その可能性がも、なくはないのかもしれないが。

「こんな怪文書みたいな置き手紙、ベリクリーデちゃん本人以外に書けると思うか?」

「うっ…。…む、難しそうですね…」

だろ?

俺もそう思う。

達筆な字を書くのは難しいが、下手くそ過ぎる字を書くのも、逆に難しいぞ。

誤字まみれだしな。

「この怪文書を見たところ、ちょっと出かけてくる、って言いたいんだろうな」

「出かける…。ベリクリーデさんが?どちらに…?」

「…さぁ…」

残念ながら、それが分からない。

どうせなら、行き先も書いておいてくれれば良かったのに。

「迷子になってたり、トラブルに巻き込まれたりしなければ良いですが…」

…確かに。

「それに…ジュリスが戻ってきた時、もし、ベリクリーデちゃんがまだ帰ってきてなかったら…」

「…今度はジュリスが荒れるな」

「あいつ、怒るとこえーからな…」

「うっ…。…夕方までに戻らなかったら、エリュティアさんに捜索を頼みましょうか」

「その方が良いだろうな…」

俺達はこの時、ベリクリーデちゃんの「お出掛け」の行き先を分かっていなかった。

精々、近所の公園にでも遊びに行ったんだろうと思っていた。

だからこそ、こんなに呑気にしていられたのだ。