神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…しかし。

「ベリクリーデさん、こんにちは。入りますね」

こんこん、とノックしてから、ベリクリーデちゃんの部屋に入ると。

「…あれっ…」

…部屋の中は、もぬけの殻。

誰もいらっしゃらない。

「…何処行ったんだ?ベリクリーデちゃん…」

「…裏庭…とかですかね?」

「よく松ぼっくり探しに行ってますもんね」

松ぼっくり集めなんて、幼稚園児の時やって以来だな。

念の為に、魔導隊舎の裏庭にも足を運んでみたが。

そこにもやはり、ベリクリーデちゃんの姿はなかった。

通りすがりの隊士達を捕まえて、「ベリクリーデちゃんを見なかったか」と尋ねても。

「いえ、見てません」とか。

「ジュリス隊長の部屋にいるのでは?」とか。

「今朝、裏庭で松ぼっくりを集めてるのを見かけましたけど…。その後は…」とか。

芳しくない返事ばかり。

やっぱ集めてたんだ。松ぼっくり。

でも、俺達がさっき裏庭に行った時は、既にベリクリーデちゃんの姿はなかった。

…本当に何処行ったんだ?あの子。

ついには、魔導隊舎のあちこちを探し回っても、やっぱり見つからない。

…マジで何処に行ったんだよ?

「まさか…家出、とか…?」

「そ、そんな…まさか…」

充分有り得る話だろ。

ジュリス恋しさに、外国まで追いかけて行ったり…。

「でも、見つからないと困るぞ。あれでもジュリスが心配して…」

と、俺が言いかけると。

「…ん?」

ルイーシュが、ジュリスの部屋の、ベッドの下を覗いていることに気づいた。

おい、何処見てんだよお前。

「馬鹿、ルイーシュ。家主のいない間に、エロ本探しはやめろよ」

ジュリスの特殊性癖が暴露されたらどうするんだよ。

熟女モノならともかく、人妻略奪モノとかだったらどうすんの。

幼女モノでも困る。

今後、ジュリスを見る目が変わってしまうよ。

しかし。

「ここにはシュニィもいるんだぞ。ジュリスの性癖大公開はやめ、」

「いえ、残念ながらエロ本はありません」

ないのか。

「ざ、残念なんですか?それ…」

シュニィが遠い目をしているが。

俺もちょっと残念だと思ったから、ルイーシュと同罪だな。

「代わりに、こんなものが出てきました」

「え?」

ジュリスのベッドの下には、紙切れが一枚転がっていた。

…何これ。

「ジュリスはエロ本じゃなくて、春画派だったか」

「いえ、残念ですがそうではないようです」

「…何が残念なんですか…?」

残念なんだよ、シュニィ。

「…手紙…?」

その紙切れは、ジュリス秘蔵の春画、ならぬ。

手紙だった。

下手くそな字で書かれた、難読の手紙。