神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

冗談じゃないぞ、マジで。

スズメバチの巣なんて、一個だけでも脅威なのに。

それが三つもあるなんて。豪華三段盛りかよ。

とにかく、全部、三つ共駆除しないと。

こういう時って、何使えば良いんだ?

高枝切りバサミとか?

でも、そんなご立派な装備は持ってないんだよ。

俺達が持っているものといえば、使いかけのGジェットと、支給品の竹箒だけ。

こんな貧弱な装備でスズメバチの巣×3に挑もうなんて、絶対間違ってるよ。

初期装備でラスボスに挑むようなもん。

それはそれでロマンがあるけど、現実だと洒落にならないからな。

しかし、今更引き返すことは出来なかった。

「ルイーシュ!竹箒!」

「はーい」

地上のルイーシュに、唯一の武器、竹箒を放ってもらい。

「ちょっと、あの、下でゴミ袋広げておいてくれ!」

「はいはい。えー、ゴミ袋ゴミ袋…」

大丈夫だろうな?やるぞ?

俺は竹箒を手に、めちゃくちゃスズメバチに刺されながら。

まずは一番手前の巣を、根元から、竹箒の柄でツンツンつついた。

頑丈そうに見えたけど、竹箒の柄でつつくと、ブツッ、と巣がごっそり取れた。

うへぁ。

マジで、人間の脳みそみたいでキモい。

うわんうわんと、出るわ出るわ。無限のスズメバチが。

ムリムリムリ。超キモい。泣きそう。

「ルイーシュ!!これ、パス!」

夢中で、地上のルイーシュに引き渡すことをせがんだが。

あの呑気なルイーシュと来たら。

「あ、はい。トスすれば良いですか?」

バレーボールじゃねぇんだよ。

「ふざけてる場合か!投げるからちゃんと受け止めろよ!」

そう言って、俺ははしごの上から、収穫したスズメバチの巣を放り投げた。

それを地上のルイーシュが受け取って、ゴミ袋にイン。

まずは、一つ目。

で、俺はそろそろ限界です。

俺は、よろよろとはしごを降りた。

「はぁ…はぁ…」

「あ、戻ってきた…。まだ二つ残ってるんじゃないですか?」

分かってるよ。

分かってるけども。

「ルイーシュ、チェンジ」

「え?」

「お前が上がれ」

俺はそろそろ限界だ。

ちょっと休ませてもらうぞ。

「良いか、俺はお前のせいで、既に34箇所刺されてる」

「え。数えてたんですか?」

いてーんだよ、馬鹿。

この時点で、死んでないのが奇跡だぞ。

「お前が35回刺されたら、代わってやるよ」

「えー」

「文句言うんじゃねぇ。誤解してるのかもしれないが、俺は不死身じゃねぇんだよ」

イーニシュフェルト魔導学院の、本物の不死身教師を呼んでくれば良かった。

いくら魔力で耐性をつけたとはいえ、痛いものは痛い。

「残基1しかねぇの、俺。死んだら終わりなの。一般人なら、この時点で34回死んでるの。分かる?」

「はいはい、分かりましたよ。もー…行ってきますって」

「よし、宜しく」

じゃ、次は俺が下からはしごを支えるとしよう。