神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…20分後。

「…なぁ、やっぱ、あの屋根の隙間のところじゃね?」

「キュレムさんもそう思いますか?」

あそこの微妙な隙間。

あそこから、ハチが出入りしてるような気がするんだよ。

「ちょっと、はしごに登って確認してみるか」

「どうぞ、頑張ってくださいキュレムさん」

おめーも頑張れよ。

俺は伸縮はしごをいっぱいに伸ばして、その上に登ってみることにした。

「俺、素手な上に防護服すらつけてないんだが…。絶対間違ってるよな、これ…」

「Gジェットなら持ってきましたけど。要ります?」

「ゴキじゃねぇんだよ、相手は…」

こんなピクニック感覚で挑むもんじゃねーよ。スズメバチ駆除って。

良い子は絶対に真似するな。

何なら悪い子も真似するなよ。

まぁ良い。Gジェットでも、ないよりはマシ。

俺はGジェット片手に、ルイーシュが支えるはしごを登った。

屋根の隙間から、わんわんと、出るわ出るわ。

うわぁ…いる。

知ってるか。スズメバチって、近くで見ると結構キモいぞ。

それから。

「いてて。いててて!ちょ、刺すな。刺すなって!」

スズメバチ共は、早速危険を察知したのか、めっちゃ刺してくる。

ぶすぶすと、容赦なく。

「おぉー…。キュレムさんが刺されてますねー…」

刺されてますねー、じゃねぇんだよルイーシュ!

他人事だと思いやがってよ。

スズメバチに刺されるなんて、一般人だったらそれだけで致命傷だが。

俺もルイーシュも、そこは魔導師。

全身に魔力を巡らせることで、スズメバチの毒による致命傷を回避していた。

さすがに不死身ではないけど、これくらいはな。

でも、痛いものは痛い。

俺ははしごのてっぺんに登ると、両腕を伸ばし、ハチにタカられながら、朽ちた屋根の一部を取り払った。

すると、一斉にスズメバチの群れが、ぶわっ、と飛び出してきた。

「ぶふっ」

顔面に、スズメバチの雨あられを受けた気分だった。

トラウマになるぞ。こんなん。

「いたたたた。鼻の頭を刺すな!」

俺は夢中で、Gジェットをシュー!と吹かした。

G用の装備だけど、殺虫剤は殺虫剤。

一時的に、スズメバチがひるんだ。

よし、今のうちに。

俺は、天井裏に身体をねじ込むようにして、中の様子を覗き込んだ。

そして、思わず悲鳴を上げそうになった。

「げっ!!マジかよ」

「どうですか、キュレムさん。死んだおじいさん秘蔵のエロ本でも見つけました?」

「あぁ、それは年季モノが溜まって…って、ふざけてる場合か!三つ!」

思わず、ルイーシュのペースに乗せられるところだった。あぶねぇ。

それどころじやねーんだよ。今。

「三つ?」

「三つあんの!巣!」

天井裏には、でっかいスイカみたいなスズメバチの巣が。

ぼん、ぼん、ぼんと豪華に三つもぶら下がってやがる。

冗談だろ。三つも巣を作ってるなんて。

そりゃ、近辺にスズメバチが大量に出没する訳だ。

原因は、この天井裏にあったのだ。