神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

しばらく、天使さんと一緒にふわふわ飛んでいると。

「うわぁ、見て」

「何を?」

「凄く気持ち悪い木」

枝も幹もぐねぐねとねじ曲がっている、不気味な植物がいっぱい。

こんなの、現世じゃ見たことない。

あっちなんて、赤黒い木の実が成ってるよ。

「あの木の実、美味しいのかな?」

「食べるのはやめておいた方が良い。痛い思いをしたくないなら」

「えっ」

「食べると、身体の内側から内臓が溶けるぞ」

…ほぇー。

「それは新感覚フルーツだね…!」

「…」

「何で黙るの?」

「いや…。…恐らくとんでもなく不味いから、食べない方が良い」

そっか。それは残念。

もし美味しかったら、お土産に現世に持って帰ったのにな。

すると。

今後は、そんな植物が突然晴れて。

平べったい、学校の校舎みたいな建物が、姿を現した。

…これは…。

「ねぇ、あれは何?」

「あれが研究所だ」

研究所…。さっき言ってたね。

この無人島に、研究所の跡があるって…。

「もう使われてないんだよね?」

「あぁ。今はな」

「何を研究してたの?」

「…それは…」

天使さんは、突然言い淀んだ。

…どうしたんだろう。言いたくないことだったのかな。

「…知らない方が良いことだ」

「知っちゃ駄目なの?」

「駄目ではない。ただ、知らない方が良い」

そうなんだ。二回も言われちゃった。

じゃあ、これ以上は詮索しないでおこう。

「今は何処に向かってるの?」

「クリスマスリースにつける、木の実を探しに来たんが…」

木の実?

…って、もしかして。

「…あの新感覚フルーツ?」

「あれじゃない」

良かった。

ついうっかり食べちゃったら、お腹が溶けるところだった。

「この島は、あの研究所によって生態系をめちゃくちゃにされて、今でこそこんな有り様だが…」

「あ」

私は、天使さんが見つめる先に気づいた。

「島のごく一部には、汚染を免れた植物が残っている。…ここが、この島本来の姿だ」

「うわぁ、綺麗…」

島の中の、ほんの隅っこ。ほんの僅かな土地に。

この島固有の生態系が、楽園のように広がっていた。

青々とした木々。きらきらと宝石みたいに光る木の実。

しかも、その中に良いものを見つけた。

あれは、もしかして

「ねぇ、見て見て。松ぼっくり」

「あぁ。現世のものとは違うがな」

なんと、驚くなかれ。

私の目の前には、銀ピカの松ぼっくりがあった。