神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

スコップ、持ってくれば良かったなぁ。

それと、ジュリスにも見せてあげたかった。

掘れば出るわ出るわ、キラキラの石や貝殻が、たくさん。

こういうのなんて言うか知ってるよ。詰め放題だ。

お得だねー。

「ふー。いっぱい採れた」

「満足したか?」

「うん、した」

だって、こんな綺麗なもの、現世では手に入らないよ。

まさに、異界の輝き。

海底を浚っていると、何だか骨っぽいものもたくさん見つかったけど。

きっとお魚さんの骨だろうね。

「それじゃ、次に行こう」

と言って、天使さんは再び、私に手を差し伸べた。

「…次…?まだ行くの?」

「あぁ。…怖いか?もう帰りたいか」

「ううん。怖くないよ」

相変わらず、私はちっとも恐怖なんて感じてなかった。

むしろ、ようやく身体が少しずつ慣れてきた。気がする。

「なら、行こう。次は海の上だ」

と言って、天使さんはふわり、と浮上した。

海の底から、一気に海の上へ。

「ほぇあー」

天使さんが、ふわっ、と翼を羽ばたかせるなり。

あっという間に、私は水の中から海の上にいた。

凄い。瞬間移動みたいだ。

暗がりから、突然明るい場所に来たものだから、眩しくて。

思わず、ぎゅっと目を閉じてしまった。

「大丈夫だ。ゆっくり目を開けてみろ」

「…ん…」

恐る恐る、瞼を開くと。

そこは、砂浜だった。

ざざー、ざざー、と黒い波が打ち寄せていた。

…ほぇー。

「出てきたの?海の中から?」

「あぁ、そうだ」

「水の中でも、水の外でも息が出来る…!」

「ここは冥界だ。現世の理とは違う」

…ことわり?

「ねぇ、ここは何処なの?」

「とある研究施設があった島だ。今は無人島になってる」

無人島なんだ。

知ってるよ。人が住んでない島のことでしょ。

「ここで貝殻を拾うの?」

「いや。案内するのは、島のもっと奥だ」

…もっと奥?

私は砂浜じゃなくて、背後に広がる広大なジャングルを見つめた。

…道無き道、って感じ。

「ここ、入れるの?」

「問題ない」

天使さんは私の手を取って、ふわりと宙に飛んだ。

そっか、成程。

天使さんは空を飛ぶから、ジャングルも海も関係ないんだ。

空飛ぶタクシー。楽しい。

「鳥になったみたいだ。わーい」

「おい、暴れないでくれ」

あ、ごめん。

「それに、このくらいならお前にも容易いだろう」

「え、そうなの?」

「…まだ力が戻っていないか?」

…力…。…戻る?

「…まぁ、良いだろう。いずれ分かる」

首を傾げる私に、天使さんはそう言った。