「うん、知ってる」と溢して、あたしの頬に手が触れた。冬でもないのに冷たくて大きな手。
近づく気配を拒むことなんてもちろんできずに、上がったまつ毛を伏せて、また受け入れる。
「……付き合ってないけど、さ」
「ん、」
「今日は柚果と離れたくない気分」
──既成事実になんてするものか。付き合ったりなんかしない。
『“可愛いを自覚した女のほうが、好き”』
君の心に、あたし以外の誰かがいるの、わかってるから。
好きじゃない、付き合わない、大学で再会しただけのひと。
……それでも今は、この冷たい温もりを手放したくない。
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