甘ったるい声。かつてあたしが武器にしていたような声だ。
ここからは見えないし、視線を送ろうとも思わないけれど、きっとこの甘さの持ち主は瑛くんの横にピッタリくっついて、顔を少しだけ傾けて上目遣いでアピールしているに違いない。あたしが捨てた武器だ。
中学の頃、あたしに勝るあざと女子なんていなかったから、この武器を拾ったのは、いま瑛くんの周りにいる女子たちなのかもしれない。
そしてこの武器を振りかざされた瑛くんは、いたって平然だ。効いているのか効果がないのかすらわからない声色での防御。
「付き合ってないよ」



