一瞬で遥乃にバレてしまっているのなら、ゆず本人にはもう気づかれているだろうか。
人の繊細な心の動きに敏感で、それでいて自分のことになるとどこか他人事のようになるゆずにはバレていないかもしれない。
ただ俺は、今の可愛くて仕方ない柚果を手放したくはない。柚果にその気持ちがないのなら、どうにかして振り向かせるから。去ったとしても、追いかける。
「あ、千輝」
遥乃が声を飛ばしたほうへ顔を向けると、かつての天敵がこちらに向かってきていた。遥乃の全てを手に入れて、受け入れる権利を持った唯一の男。
井上千輝、俺が敵わなかった相手。
わざわざ毎朝教室まで来て俺に牽制してたの覚えてっからな。まあそれももちろん過去の話で、今となっては良い思い出だ。



