甘さなんかいらない




いつもは“ゆず”と呼ぶ瑛くんが、たまにあたしを“柚果”と呼ぶ。


ゆず、瑛くん、と呼び合うのは紛れもなくふたりだけの取り決めで特別で、あたしが始めたんだ。



その中でよばれる“柚果”はもっともっと特別な気がするんだ。



瑛くんとして意味を持たせているのかは全くわからないので、勝手に意味を持たせて浮かれてみたりして。



その後に続く言葉を待っていると、ふと。



ふと、あたしだけを見つめていたはずのダークブラウンが、あたしの後ろのその向こうへと視線が移った。



自然と、お互いに腰に回していた腕の力が抜けて、少しだけ離れて。