チャリパイ11~時をかける森永探偵事務所~


松坂牛がこれ程までに不味く感じたのは、生まれて初めての事だった。


「頑張れコブちゃん!
あと一切れだ!」


「…ハァ……あ~~もうヤダっ!」


時間いっぱい、二十九分でどうにか完食した子豚。


「そろそろヤバイな…
コブちゃん…」


心配そうな顔でシチローが呟いた。


なにしろこの大食い対決に負ければ、即ゲームオーバーである。


『mother』を破壊して人類の未来を救うどころか、シチロー達5人全てが現実の世界に戻る術を失ってしまう。


「シチロー!なんとかならないの!」


ひろきが、すがる様な瞳でシチローに訴える。


「ごめんなさい…皆さん…私が無理なお願いをしたばっかりに…」


俯いて、泣きそうな声で凪…


そんな凪の肩をてぃーだが優しく抱いて、囁く様に言った。


「今更そんな事を言っても始まらないわ。
あとはコブちゃんの頑張りに賭けましょう!」



その子豚は…



「……………………」



息をするのも苦しそうだ…