松坂牛がこれ程までに不味く感じたのは、生まれて初めての事だった。
「頑張れコブちゃん!
あと一切れだ!」
「…ハァ……あ~~もうヤダっ!」
時間いっぱい、二十九分でどうにか完食した子豚。
「そろそろヤバイな…
コブちゃん…」
心配そうな顔でシチローが呟いた。
なにしろこの大食い対決に負ければ、即ゲームオーバーである。
『mother』を破壊して人類の未来を救うどころか、シチロー達5人全てが現実の世界に戻る術を失ってしまう。
「シチロー!なんとかならないの!」
ひろきが、すがる様な瞳でシチローに訴える。
「ごめんなさい…皆さん…私が無理なお願いをしたばっかりに…」
俯いて、泣きそうな声で凪…
そんな凪の肩をてぃーだが優しく抱いて、囁く様に言った。
「今更そんな事を言っても始まらないわ。
あとはコブちゃんの頑張りに賭けましょう!」
その子豚は…
「……………………」
息をするのも苦しそうだ…
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