「かっかっかっ♪
やはりここは町奉行ではちと役不足だったようですな♪」
金さんが海に投げられて、急に上機嫌になる水戸の御老公。
アンタは本当に正義の味方なのか?
「それ!格さん、あの悪代官共にアレを見せてやりなさい♪」
再び巡って来たチャンスを逃すまいと、光圀は格さんに印籠の提示を促す。
それを受け、光圀の両脇にぴったりと付いた助さんと格さんは、大声を上げて悪人共を威嚇した。
「ええ~い!静まれ~!静まれ~い!」
その号令に、辺りは水を打ったように静まり返り、悪代官達は何事かといった顔で光圀達に注目していた。
まるで歌舞伎役者のごとく大きく右肩を張り出した格さんは、懐に手を突っ込んであの名台詞を導き出す。
「皆の者、頭が高い!
ひかえおろう~~!
この紋所が目に……この紋所……………………
あ…あれ…?」
「どうした、格さん?」
「……いけねぇ……宿に印籠忘れてきちまった!」
「なんですとおおぉぉぉぉぉ~~~っ!」
現実は、なかなか時代劇のようにはいかないものである。
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