「えっ、敬ちゃん、、、わたしが分かるの?」
わたしの言葉に頭を抱え、顔を歪める敬ちゃん。
記憶が消えているはずなのに、あの時の記憶が蘇りかけて頭が混乱しているようだった。
「大丈夫?」
わたしが心配で敬ちゃんの腕を擦ると、敬ちゃんはゆっくりを顔を上げ、「やっぱりくる実ちゃんだ。」と言って、涙を流しながら微笑んで見せたのだった。
わたしは、敬ちゃんと歩きながら話をした。
どうやら、敬ちゃんの暮らす家は、わたしが働くお花屋さんの近くらしい。
「まさか、くる実ちゃんに会えるなんて、、、夢みたいだ。」
そう言って微笑む敬ちゃん。
微笑む敬ちゃんを見て、ホッとする自分がいた。
「そういえば、こっちに戻ってきてからは、どうしてるの?」
「元居た職場を退職して、今はお花屋さんで働いてるよ。あのとき、森の木々たちに助けてもらったから、同じ植物として恩返しがしたくて。」
わたしがそう言うと、敬ちゃんは「くる実ちゃんらしいなぁ。」と言って笑った。
そうこう話しているうちに、あっという間にわたしの自宅前に着いた。
わたしは「わたしの家、ここなの。」とマンションを指差すと、敬ちゃんはマンションを見上げ、「えっ?!ここ?!」と驚いていた。
「今は、黒木さんとここに住んでるんだぁ。」
わたしの言葉は驚いた表情のまま、わたしの方を向く敬ちゃん。
「黒木さんって、、、あのクロキさん?!」
「うん、死神を引退して、今は人間として暮らしてるの。」
敬ちゃんは話についていけないといった様子で「えっ??、、、え?!」と繰り返していた。



