わたしは帰宅をすると、まず処方してもらった風邪薬を飲んだ。
熱をはかってみたが、37.9℃。
解熱剤を飲む程ではない。
何か食べなくてはいなけないと分かってはいるが、食欲がなく、わたしはそのまま寝室に行き、布団に入ってベッドに横になった。
やはり、病院に行くだけでも体力が消耗されたのか、気が付けば眠りに就いていた。
目が覚めると、目の前には黒木さんが居た。
帰宅してから、ずっとわたしの手を握っていてくれたらしい。
「くる実さん、気分はどうですか?」
「まだ少し身体が怠いです。」
わたしの言葉に黒木さんはわたしの額に手を当てると、「まだ少し熱がありそうですね。」と言った。
「食欲は?何か食べれそうですか?」
「あまり食べる気になれなくて、、、」
わたしの表情を見て不安そうに頭を撫でる黒木さん。
すると、黒木さんは「でも、何か食べないと、、、僕が何か作りますね。ちょっと待っていてください。」言い、寝室を出て行った。
キッチンから何やら黒木さんの独り言と物音が聞こえてくる。
まだ料理を作った経験がない黒木さん、、、大丈夫だろうか。
そう思いながらしばらく待っていると、「くる実さん、お待たせしました。」とオボンにお茶碗を乗せた黒木さんが寝室のドアから顔を覗かせた。
「全部食べれなくてもいいので、一口だけでも食べてください。」
そう言って、黒木さんが持ってきたのは、玉子がゆだった。
煮込みすぎたのか、赤ちゃんが食べる離乳食のような状態になっていたが、料理が出来ない黒木さんがわたしの為に作り方を調べながら作ってくれたんだなぁと思うと、嬉しくて涙が溢れてきた。



