「生きること」 続編


わたしは、黒木さんが出勤してから、岡部さんにお休みの電話を入れると、もう一眠りした。
そして、午後の診察開始時間に向けてタクシーを呼び、黒木さんが勤める総合病院に向かったのだ。

総合病院の正面玄関から入り、わたしは総合受付に向かうと「桐屋くる実です。内科で予約が入ってると思うんですけど。」と受付の女性に伝えた。

すると受付の女性は、分かっていますよ、とでも言うような表情で「板橋先生の診察ですよね。内科の受付前でお待ちください。」と言い、内科がある方を指した。

わたしは「分かりました。」と返事をすると、内科がある方へ向かい、内科受付前にある長椅子に座って呼ばれるのを待った。

10分程待っていると、「桐屋くる実さん。2番の診察室へお入りください。」とアナウンスがかかった。
わたしは立ち上がると、2番の診察室へ向かい、横開きの大きな扉をノックした。

すると、中から「どうぞ〜、お入りください。」という声が聞こえ、扉を開けた。

そこには、ワインレッドのような医療スクラブを着た、板橋先生がパソコン前に座っていた。
板橋先生は、ポニーテールをしたサバサバした女医さんだ。

「どうぞ、座って〜。」
「失礼します。」

わたしは板橋先生の前にある椅子に腰を掛けると「よろしくお願いします。」と言った。

「くる実ちゃん、風邪引いたんだって?」
「はい、、、ちょっと身体が怠いのと、喉が痛くて。」
「ちょっと診せてもらうね〜。」

板橋先生はそう言って、わたしを診察すると「うん、風邪だね。」と頷き、パソコンに向かって何かを打ち込んでいた。

「一週間分、風邪薬出しておくね。でも、念の為、また一週間後に来れる?」
「はい、分かりました。」
「黒木先生の奥さんだから、丁寧に診察しないとさ!」
「いえ、まだ奥さんじゃないですよ。いつもすいません。」

わたしがそう言うと、「婚約してるんでしょ?もう奥さんみたいなもんじゃん!」と言い、ハハハッと笑いながら板橋先生は言った。

「薬剤師に薬持って行かせるから、受付前で待ってて。」
板橋先生がそう言うので、わたしは「わざわざいいですよ。自分で薬局に取りに行きますから。」と言ったが、板橋先生は「ダメ。事情は軽く聞いてるから、大人しく受付前で待ってなさい。」と強い口調で言った。

わたしは「、、、わかりました。」と返事をすると、板橋先生の言う通り、内科受付前で薬剤師さんを待つことにしたのだ。