「生きること」 続編


次の日の朝、目を覚ますとわたしはすぐに身体の異変に気付いた。
身体中が怠い、熱い、喉も少しイガイガする。

すると、まだわたしの横で寝ていた黒木さんが目を覚まし、いつも自分より早く起きているわたしがまだベッドで寝ていることを不思議に思ったのか、「くる実さん、大丈夫ですか?」と身体を起こし、問いかけてきた。

そして、わたしの表情を見ると何かを察したかのようにわたしの額に手を当て、左手を取ると、脈をはかり始めたのだ。

「熱がありますね。すみません、昨日僕がベランダに出て付き合わせてしまったばかりに、、、」
「黒木さんのせいじゃないです。多分ここ最近、引っ越しもありましたし、仕事の方も注文が多くて忙しかったので、疲れが出ただけだと思います。そんなに自分を責めないでください。」

わたしの言葉に心配そうな表情を浮かべる黒木さんは、両手でわたしの頭を撫で、額にキスをした。

「今日、内科の板橋先生にお願いしておくので、念の為、診てもらってください。タクシーは手配しておきますから。」
「分かりました。でも、タクシーは大丈夫です。自分で呼べますから。黒木さんは、過保護すぎますよ。」

わたしがそう言って微笑んで見せると、黒木さんは「過保護?」と不思議そうに言った。

わたしは「優し過ぎるということです。わたしはもう34歳の良い大人ですよ?大丈夫です。ちゃんと自分でタクシーを呼んで、板橋先生に診てもらいに行きますから。」と言うと、黒木さんの手を握り締めた。

「いつも心配ばかりかけて、すいません。」
わたしがそう言うと、黒木さんはわたしの手を握り返して首を横に振ると、「過保護、、、新しい言葉を覚えました。」と言った。

そして、わたしたちは笑い合った。