次の日、今日から新しい自宅からの出勤だ。
わたしはいつものように黒木さんにお弁当を渡すと、短いキスをし、玄関まで行ってお見送りをした。

わたしは職場が近くなったので、ゆっくり支度をすると、出勤時間の10分前に自宅を出た。

「おはようございます。」

出勤すると、店長の岡部さんは既に出勤していて、元気よく「あ、くる実!おはよう!引っ越しは無事終わったかい?」と言ってくれた。

「はい、何とか無事に終わりました。」
「すぐ近くのあの大きいマンションでしょ?あんな良いとこ住めるなんて、さすが医者の嫁だね!」

岡部さんは茶化すようにそう言った。
わたしはエプロンをつけながら「まだ嫁じゃないですよ。」と言い、照れ笑いをする。

すると、岡部さんが何かを思い出したかのように急に「あ、そういえば」と言い出した。

「昨日、変なお客さんが来てさ。店に入ってきたと思ったら、店内を見渡したあと、桐屋くる実さんって人は居ますか?って訊いてきてさ。」
「えっ、、、」

岡部さんの言葉に一気に背中がゾワッとするのを感じた。

「何か怪しかったし、個人情報だから、うちにそのような方は居ませんよ、って言っといたけど、それで良かったかい?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。ちなみになんですけど、その人って、茶色い髪に巻き髪でした?」

わたしがそう訊くと、岡部さんは目を見開き「そうそう!」と言うと、続けて「何か感じの悪い人だったよ。」と言った。

舞さんだ、、、
こんなに早く、わたしの職場を見つけてくるなんて、、、

わたしは危険を察知すると、岡部さんに「その人、ちょっと危ない人なので、もし何かあったらすぐに警察に連絡してください。」とお願いをした。