再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり

その日の夕方、私は定時で仕事を切り上げた。
いつもだったら伝票整理や取引先の対応に追われているはずなのに、不思議な位仕事が片付き私のデスクもすっきりときれいになった。

「吉野チーフ、今日はすごく順調ですね」
「まぁそんな日もないとね」

石田くんにもわかるほど今日の私は快調だ。

「課長も昨日はチーフに無理に飲ませたから悪いと思って、今日は仕事を押し付けてこないんですよ」

そういえば毎日ちょっとずつ私に仕事を回してくる課長が今日は何も言わない。
昨日の飲み会での専務と課長は多少強引だったから、誰か何か言ったのかもしれないな。
確かにあのやり方はハラスメント以外の何でもない。
まぁおかげで私は今日定時で上がれるのだから、文句を言わないでおこう。

「チーフ、飲みに行きませんか?」

珍しく定時に仕事を終えて帰り支度をする私に千穂ちゃんが誘ってくれたけれど、今日は先約がある。

「ごめん、今日は約束があるの」
「そうですか、チーフと飲みたかったのに残念です」
「また、今度ご馳走するから」

私はごめんねと千穂ちゃんに両手を合わせデスクを後にした。