再会は、嵐を呼ぶ恋の始まり

滅多に入ることのない部長室に入り、私は大きなデスクの前に立った。

「何でしょうか?」

このタイミングで呼ばれるってことは、石田くんいついての文句を言われるのだろうと想像はつく。
そう思うからこそ私は憮然とした表情になってしまった。

「俺から引き継いだ取引先をそのまま吉野が持ち続けているんだな?」
「あ、ああ、そうですね」

長嶋が転勤になった時にとりあえずと言って引き継いだ取引先をまだ石田くんに引き継げないまま今日まで来てしまった。

「課長に言って調整してもらえばよかっただろ?」
「いくつかは他の人に引き継ぎましたから、そのままってことでもないんですが・・・」
「新規で取引の少ない会社だけな」
「そう、ですね」

その点は否定しない。
長嶋が担当していたのはうちの課の主要取引先だったし、それを誰かに渡すことに躊躇う気持ちもあった。

「まずは丸星デパートから、石田に引き継ぐように作業に入ってくれ」
「え、まだ石田くんには無理です」
「何を言っているんだ。もう十分だ」
「そんな・・・誰もが長嶋みたいに優秀なわけじゃないんだから」
自分の物差しで測らないでと言いそうになって、言葉を止めた。

私ったら、とっさに『長嶋』って呼んでしまった。