「お詫びだから、飲んでくれると嬉しいな」
「わ、わかった。ありがとう」
マスクで見えないのに、優しく微笑んでくれたのが分かって……もう一度お礼を言って、ありがたく水を頂いた。
ぷはーッ。生き返る。
緊張と全力疾走で、喉がカラカラだったんだぁ。
完全に力が抜けた私――を狙ってか。
綾瀬くんが、とんでも発言を繰り出す。
「それより〝れーくん〟って?」
「ぶッ、げほ、ごほ!」
そう言えば!
あの時、慌てて下の名前で呼んじゃったんだ!
「ご、ごめん。綾瀬くんって言うと、個人情報丸出しかなって思って……」
「玲も個人情報だけどね」
クスクス笑う玲くん。
黒い髪が、笑顔と一緒に揺れている。
カッコイイ姿に、瞳が吸い込まれそう。
「同じ学校の子がいたら、いくら変装してても〝綾瀬〟って呼んだら即バレだもんね。気を遣ってくれてありがとう」
「え、ううん!私の方こそ、ありがとう」
「ありがとう?俺なにかしたっけ?」
「電車から落ちそうになった時〝さゆ〟って私の名前を呼んでくれて、嬉しかった」
「え、嬉しかった?」
「うん」
ポカンとした綾瀬くんが、少しずつ顔を赤らめる。



