推しにおされて、すすむ恋



「〝この子〟って、まさか、あなた?」
「彼女ー?」

「え、と……っ」


女子の顔が、みんな怖いよ!
――えぇい、こうなったら!


「い、いこう。れーくん!」


無我夢中で、綾瀬くんの腕を引っ張り、輪を抜ける。

一瞬、綾瀬くんは驚いた顔をしたけど……「れーくん」って私が呼んだ途端、瞳が見えなくなるくらいキュッと笑った。


「ってわけだから、ごめんね。ばいばい」


恐怖に震える私とは反対の、余裕たっぷりの綾瀬くん。

唖然とする女子たちに向かって、どこぞのアイドルのように手と笑顔を振りまいた――




「はぁ、はぁ……っ」
「小鈴さんのおかげで、早く改札口に着いたね」


猛ダッシュで改札口を通り、やっと一息つく。

膝に手を置き肩で息をする私とは違い、綾瀬くんの涼しい顔といったら。


「綾瀬くん、なんか慣れてる……?」
「慣れてないけど、こういう経験は初めてじゃないから……巻き込んでごめんね」


言いながら「はい」と、キンキンに冷えた水を渡してくれる。お金を出そうと財布を持つと、長い指に押し戻された。