溺愛俺様系男子と完璧王子様に同時に好かれまして

 「てかさ、お前の手ちっちゃくね」
 唐突にそう言うと、恋人つなぎしてる手を上に上げて、私の手をまじまじと見つめた。
 「私が小さいんじゃないよ。そっちがおっきいだけでしょ」
 そうだよ。私は特段身長も小さいわけじゃないもん。結構平均に近い。
 それに比べて彼は、少し見上げなきゃ目を合わすこともできないくらい高い。
 だから、手の大きさもおんなじことだと思う。
 「怒んなって。ちっさくてかわいい手じゃんか」
 別に怒ってはないけど。
 「あとな、明日からもう教室で集まんのはやめような。さすがに寒すぎて風引くだろ」
 一応気づかってくれるみたい。
 ほんの少しの優しさだけど、きゅんとしてしまう私はきっとちょろいんだ。
 「そうだね。ありがとう。じゃあどこにする?」
 ほんの少し考える素振りを見せて、彼は言った。
 「業後にあったかい所って図書館ぐらいじゃね」
 「たしかに、そうだよね…」
 そのとおりなんだけど、私が居てもいいものなのか…。
 「なんかひっかかることあるんなら言えよ」
 「うーん、受験生がいっぱい居て空気がぴりぴりしてるかなぁって思って…」
 でも、寒さに震えるよりはましだよね。
 「あー、なるほどな。俺の姉貴もすごかったもんな」
 お姉さんいるんだ、知らなかったな。
 そんなこと思ってる間に彼は良い案を思い付いたらしく、にやりと口角を上げて笑った。
 その表情がかっこよすぎていちいちどきっとしてしまう。
 「じゃあ俺が部活ある日は俺んち先帰っといて。ん、これ合鍵」
 勝手にポケットから取り出した鍵を私の左手に握らせた。
 「あ、合鍵?お、お家?」
 ちょっと待って。全然理解できないんだけど。
 「俺んち夕方誰もいないから。親が帰ってくるまで一緒にいよーや」
 口調が軽すぎて、何でもないようなことに聞こえちゃう。
 「慌てすぎだし。おもろっ」
 「からかわないでよ、もう」
 こっちはそんな余裕ないんだからさ。
 いつの間にか私の家の前に着いていた。
 繋いだ手をどちらからともなく解くと、彼の温もりが一瞬にして消えてしまって、少しだけ寂しく感じる。
 「じゃ、明日な」
 「うん、また明日」
 私と繋いでいた手をポケットに突っ込んで、逆の手を軽く挙げて見送ってくれる。
 家のドアを開けて、なんとなく振り返ってみると、じっとこちらを見つめていた彼と目が合った。
 彼はふっと目を細めて優しく笑った。
 いつもと違う優しい笑顔にまたどきっとする。
 私は本当に今彼と付き合ってるんだ。
 釣られて私も笑い返して、ゆっくりとドアを閉めた。