冷え切った教室に戻ると、皮膚から寒さが入り込んできて、体内まで冷え込んでくる。
私の心まで寒さで震えてる。
誰か温めにきてよ…。
手のひらに握られているココアの缶だけがじわじわと私を温めてくれる。
ぶるぶると震える体を必死に擦って少しでも温まろうとするけど、もう限界だよ。
「よ、お待たせ」
「神城くん…」
視線をあげると、彼が扉に寄りかかって立っていた。
私の限界を察知していたかのようなタイミングで現れた彼。
「この教室寒くね。こんなところにいたら風邪引くだろ」
何よ、それ。
待っててくれてありがとうも言えないわけ?
心の中で不満を呟いていると、彼はつかつかと歩いてきて、学ランを私に被せた。
予想外に爽やかな香りが私の鼻孔をくすぐる。
「汗臭い、とか言うなよ」
「そんなことないよ。いい香りする」
くんくんと嗅いでみせると、彼は呆れたような顔をして、私の鼻をつんと触った。
「わざわざ嗅ぐなよ。てか、鼻冷たっ」
たしかに布で覆われてないからか、顔は冷えてるかも。少しぴりぴりする感じがする。
彼は両手のひらで私の頬を包み込んだ。
ごつごつしてるけど、触り方は割れ物を扱うかのように優しくて、触れられてるところからじわじわと温かくなって自分が冷え切っていたことを実感する。
目を開けていると彼と視線が絡んで、心臓が駆け足になる。
突然彼の顔が近づいてきた。
え、もしかしてこれって…?!
反射的にぎゅっと目をつむると、おでこにこつんと何かが当たった。
「キスされるかも、とか思ったか。ばーか」
しゃべると甘い吐息が唇にかかってそれだけでもう爆発しちゃいそう。
状況が読めなくて恐る恐る目を開けると、目の前には距離感ゼロで彼の顔があって、すぐに目を閉じた。
私のおでこに当たったのは彼のおでこみたいだった。
頬もおでこも彼の体温が流れ込んできて、さらにどきどきもあって私はもう全く寒さを感じてなかった。
むしろ今熱ありそう。
心臓壊れちゃいそう。
しばらくすると、私は解放された。
ゆっくり目を開けると、彼は満足そうに笑みを浮かべていた。
「少しはましになったんじゃね。じゃあ帰るか」
なんでそんなに余裕なの。
あんなに至近距離だったのに。
「あ、そういえば忘れてたな」
歩きかけた彼は振り返ると、また私の方に歩み寄ってきて、屈むと右手の人差し指を私の唇に軽く押し当てた。
キスされたわけじゃないのに、さっきまで近くに居た彼の存在感がまだ残ってて、おかしな錯覚を起こしちゃう。
「唇も温めてほしいんじゃねぇの」
私の唇を数回むにむにすると、指先をすうっと唇をなぞるように動かした。
「別にそんなこと思って…」
ないしって続けようとしたところで私の言葉を遮るように指で口を閉ざされた。
もう限界…。
目を逸らしても唇の感覚だけ強烈に伝わってくる。
「まあいっか。今日はこれくらいで勘弁してやるよ」
私の唇もようやく解放されて、その瞬間ふっと体の力が抜けた。
ちょっと拍子抜け。
ほんとにキスされちゃうって頭の片隅で期待してた自分がいたことに気づいて頭をぶんぶん振った。
何考えてんのよ、私のバカ。
急いで席を立って彼の隣まで行くと、私の右手に彼の左手が絡んだ。
あまりにも自然な動作すぎて、そうするのが当たり前だったかのような錯覚に陥る。
妙にしっくりくる彼の左手は私の手よりはるかに温かい。
そうして私達は帰路に着いた。
私の心まで寒さで震えてる。
誰か温めにきてよ…。
手のひらに握られているココアの缶だけがじわじわと私を温めてくれる。
ぶるぶると震える体を必死に擦って少しでも温まろうとするけど、もう限界だよ。
「よ、お待たせ」
「神城くん…」
視線をあげると、彼が扉に寄りかかって立っていた。
私の限界を察知していたかのようなタイミングで現れた彼。
「この教室寒くね。こんなところにいたら風邪引くだろ」
何よ、それ。
待っててくれてありがとうも言えないわけ?
心の中で不満を呟いていると、彼はつかつかと歩いてきて、学ランを私に被せた。
予想外に爽やかな香りが私の鼻孔をくすぐる。
「汗臭い、とか言うなよ」
「そんなことないよ。いい香りする」
くんくんと嗅いでみせると、彼は呆れたような顔をして、私の鼻をつんと触った。
「わざわざ嗅ぐなよ。てか、鼻冷たっ」
たしかに布で覆われてないからか、顔は冷えてるかも。少しぴりぴりする感じがする。
彼は両手のひらで私の頬を包み込んだ。
ごつごつしてるけど、触り方は割れ物を扱うかのように優しくて、触れられてるところからじわじわと温かくなって自分が冷え切っていたことを実感する。
目を開けていると彼と視線が絡んで、心臓が駆け足になる。
突然彼の顔が近づいてきた。
え、もしかしてこれって…?!
反射的にぎゅっと目をつむると、おでこにこつんと何かが当たった。
「キスされるかも、とか思ったか。ばーか」
しゃべると甘い吐息が唇にかかってそれだけでもう爆発しちゃいそう。
状況が読めなくて恐る恐る目を開けると、目の前には距離感ゼロで彼の顔があって、すぐに目を閉じた。
私のおでこに当たったのは彼のおでこみたいだった。
頬もおでこも彼の体温が流れ込んできて、さらにどきどきもあって私はもう全く寒さを感じてなかった。
むしろ今熱ありそう。
心臓壊れちゃいそう。
しばらくすると、私は解放された。
ゆっくり目を開けると、彼は満足そうに笑みを浮かべていた。
「少しはましになったんじゃね。じゃあ帰るか」
なんでそんなに余裕なの。
あんなに至近距離だったのに。
「あ、そういえば忘れてたな」
歩きかけた彼は振り返ると、また私の方に歩み寄ってきて、屈むと右手の人差し指を私の唇に軽く押し当てた。
キスされたわけじゃないのに、さっきまで近くに居た彼の存在感がまだ残ってて、おかしな錯覚を起こしちゃう。
「唇も温めてほしいんじゃねぇの」
私の唇を数回むにむにすると、指先をすうっと唇をなぞるように動かした。
「別にそんなこと思って…」
ないしって続けようとしたところで私の言葉を遮るように指で口を閉ざされた。
もう限界…。
目を逸らしても唇の感覚だけ強烈に伝わってくる。
「まあいっか。今日はこれくらいで勘弁してやるよ」
私の唇もようやく解放されて、その瞬間ふっと体の力が抜けた。
ちょっと拍子抜け。
ほんとにキスされちゃうって頭の片隅で期待してた自分がいたことに気づいて頭をぶんぶん振った。
何考えてんのよ、私のバカ。
急いで席を立って彼の隣まで行くと、私の右手に彼の左手が絡んだ。
あまりにも自然な動作すぎて、そうするのが当たり前だったかのような錯覚に陥る。
妙にしっくりくる彼の左手は私の手よりはるかに温かい。
そうして私達は帰路に着いた。

