「うん、俺だって何回も忘れようとした、でも何かあるたびに思い出すんだ」
「忘れなくてもいいんですよ。それは思い出なんですから」
「それはわかってるよ、でも、無理なんだ。雅子の死を乗り越えられないんだ。俺はだめなんだ、ダメ人間なんだ。悲しい出来事があったら、引きこもりになってしまうんだ」
光は文脈がつながっているか、文章になっているかなんて考えずに自分の胸の内を話した。彼は不安なのだ、自分が社会に復帰できるのかどうか。
「大丈夫です、私たちが付いてます。みんなで葛飾さんの穴を埋めましょう」
「うん」
いや、俺はこいつを嫌っているはずだ。なのになぜだ……
俺がまだ立ち直れてないのか、それとも……
「改めて私と付き合ってくれませんか」
「急だなあ」
答えは否だ、だが、それで良いのか? 雅子の言うことに背くことになる。それにその声はあいつから発されるとは思えないほど優しい、俺を慰む声に聞こえる。
「光」
その瞬間意識が飛んだ。



