やはりかと住職は思った。この霊は霊感のない人間にまでも霊を見せているのだ。しかも、おそらくはっきりと。ここまでの霊は今までに無かった。それと同時に別の問題も出てきた。それはこの霊が存在していると世界のバランスが壊れてしまうかもしれないと言うことだ。
これは難しい問題なのだ。ほとんどの霊は存在していても害がそこまであるわけではない。大体は金縛りをさせたり、肩こりをさせたり、そんな悪戯めいたようなことだ。
たまに人を殺すような悪霊もあるのだ。そこだけは気をつけなければならない。ただ、彼女はおそらくそのような存在ではない。悪霊はよほど前世で大きな悪事を働いてない限りはなることはない。
ただ、彼女はそれよりももっとやばい存在だ。彼女自身が何かをするわけでは無い。ただ、強すぎるだけだ。
彼女を生かしておけば世界の秩序は壊れ、人々のストレスは溜まり、不満が増え、犯罪や戦争が多くなる。そのような霊だろう。彼女そして彼には申し訳ないが、祓うしかない。
このことを彼女らに言ったら悲しむだろう。この事実は私だけが知っていればいいのだと、そう住職は思う。
「どうしたんですか? そんな考え事をして」
末広は純粋な気持ちで聞く。この数十秒の謎の間。彼らにとってこんなに恐ろしいことはない。
「ああ、君たちには言いにくい事を言ってしまうことになる。すまないがその霊は払わなくてはならない」
「……」
「……」
なにも音がない。静かな空間になった。



