光と幽霊の彼女


「それはいいですけど、光さん。あなたたは今のままで良いんですか? 強いて言って、雅子さんが見えてることが事実としましょう。けれど、それって言い方きついんですけど、死者としか話さないで、生者のことは考えてない。それってもう死んでるんじゃないですか?」
「俺が、死んでるって?」

 暴論過ぎないかこれは、たしかに俺はもう現実を見ていない。だが、それは雅子を認めないお前らが生んだ結果だ。むしろ俺はもう十分我慢してきたと思う。本当によく爆発しなかったもんだよ、俺は。

「ええ、もう、死んでいるのと同義だと思います」
「それは馬鹿にしすぎじゃないか? 俺はちゃんとこの世に生を受けているし、俺は自分の意志で動いている。それを死んでいるのと同義は無理があると思うぞ」
「確かにそれは間違ってはいませんね、ですがあなたは本当に自分の意志で動いていますか?」

 ほう、哲学で攻めてきたか。だが、怯むわけには行かない。

「俺は、たしかに自分の意志で動いているはずだ」
「それはあなたの認識の問題じゃないですか?」
「そうだけど」
「その認識はどこから来たんですか?」
「俺の中だけど」

 何を言っているんだ。この女は、俺の認識は俺の中にあるものだろ。

「よく考えてください、あなたはこの世に居もしない人間が今ここにいると感じている。けどそれはあなた以外誰もその存在を把握していないんですよ。それってこの世に存在しているって言っていいんですか?」
「俺の中では少なくても存在している。それは事実だ。だからいいじゃないか」

 本当のことを言ったらお前らの中でも存在してほしいんだがな。

「そうじゃないんですよ。それってあなただけが感じているものでしょ。それが存在しているという認識はあなたしかしていない。ならそれが存在しているという証拠。いえ、存在しているという事実は誰が証明できるでしょうか」

 今雅子を物扱いされていて、さらに馬鹿にされて、否定されている。この事実に反論するべきだが、今クラスメイト達に見られて、四十一対一だ。言い返せば言い返すほど不利になる可能性がある。みんな雅子のことを見えてないからな。

 だが、戦わなくてはならない。現に今雅子は半泣き状態だ。その状況を見たら、力が足りない状況でも打って出なければならない。反論しなければならない。

「ちょっと待って待ってくれ、俺に幽霊である雅子の存在を証明しろなんて、無茶な話だろ。俺にしか認識できないんだ。それは誰にも証明できない。それを証明しろなんてそんな無茶な話を俺に吹っ掛けてきているのか?」

 まさにそうだ。反論したいのだが、無茶難題過ぎる。

「そうですよ、そういう無茶な話ですよ。無茶な話だからこそ私は証明しろって言っているんです。あなたが人に説明できないものを誰が理解できると思っているんですか? そんな非科学的なことを」

 はあ、分かりあえんな。少しはこっちにも寄り添ってくれ、全否定しないでくれ。

「非科学的科学的、そんなものは関係がない。俺はここに雅子の存在を感じている。それに、雅子が生きているか死んでいるかなんて誰にも説明できないことだろ。なら君は雅子が存在しないことを証明できるのか?」

 逆をつく。悪魔の証明だ。無いものを証明することはできない。そっちが存在を証明しろって言うのなら、そっちこそ存在しないことを証明しないとフェアじゃ無い。

「説明できませんね。ですが、その中途半端な不安定な存在にすがっているのはほかでもない光君じゃないですか」
「何だと、俺が不安定な存在にすがっているって?」

 これ以上は雅子の悪口は許さん。

「だって誰にも存在しているもしていないも、誰にも証明できないんでしょう、それってこの世に存在していると言えるんでしょうか」
「俺には存在しているように見えるんだ」

 また哲学攻めかよ。面倒くせえ。

「存在している、それは光君にとってですよね。私たちにとっては存在していません。でしょ大峰さん」
「あ、ああ」
「これが答えです、残念ながらこれがみんなの相違なんですよ。何ならほかの人にも聞いてみましょうか?」
「や、やめてくれ」

 今の状況で俺のことを助けてくれる人なんているわけが無い。

「いえ、聞きましょう」

 彼女はそう言い切った。