さらに末広は「おお」と言ったのを聴き逃さなかった。
「何がだよ」
俺は言い返す。こんな口論で負けるつもりはない。
「今もまだ、亡くなられた彼女が今もそばにいるという幻覚に囚われていて、光さんは現実に戻りたいとか思わないんですか?」
「思うわけねえだろ、俺にとっては雅子が全てなんだよ。なんでそんなこと思うと思っているんだ」
現実に戻る=お前と付き合うって事か?
「私なら恥ずかしいですよ。他人に、クラスメイトに、友達に、自分のことが好きな人に、過去を引きずっていると思われることが。いい加減目を覚ましてください光さん!」
「ちょっと言い過ぎじゃない? 私が過去だって言うの?」
雅子が文句を言う。彼女にとっては自分の存在が否定されているのと同義なのだろう。俺にだってそうだ。許せる訳が無い。
「そうだ、そうだ、雅子の言うとおりだ、雅子は過去じゃない、俺の光、希望だ。そんなことを言われる筋合いなんてどこにもあるわけがない。帰ってくれ!」
本当に許せない。俺の文句はギリ許せるかもしれない、ただ雅子の悪口は絶対に許せない。
「帰りません! 昨日は逃しましたけど、今日は逃しまさんから。昼ごはんを食べる時間はもうないと思ってくださいね」
凛子のその言葉を聞いた後横を見ると末広が弁当を広げていた、おそらく今は昼休みの時間だと気付いたのであろう。それを見て腹が減ってきた。
「昼ごはんぐらい食べさせてくれ、昨日の夜ご飯ハンバーガーだけだったんだよ」
ちなみに今日の朝ごはんと昼のお弁当はお母さんを頼れないから自分で作った。作り方よく分からないから苦労したのを覚えている。
「昨日本当にハンバーガーだけだったんですか?」
そこは反応するな! まあいいか。
「ああ、そうだ。昨日母さんと喧嘩したからな。あれ以来口も聞いていないよ」
事実、朝も母さんにはおはようぐらいしか言っていない。



