そのまま一時間目の授業が始まったが、怖くて末広の顔を直視することができない。何を考えて、何を思ってあんなに理解してくれないのか。だが、顔を直視出来ないのは末広も同様みたいだ。なにしろ視線を感じないのだ。
休み時間。
「光、ちょっといいか?」
「なんだ?」
末広が話しかけてくる。なんだ? 理解してくれるのか?
「昨日の告白結局断ったのか?」
「ああ」
案外普通の質問をしてきた。これは末広なりの考えなのか?関係を修復する為のやつなのか? それとも……。
「今からでも付き合えよ」
「なんでだよ」
昨日は俺の選択を理解してくれていたじゃねえか。
「現実に戻るチャンスだからだ」
ふざけんな! お前もその考えかよ。
「みんなみんな現実に戻れ戻れって、今の雅子との生活が俺にとっての現実なんだよ。それが別の女と付き合えって、付き合えるわけがない。母さんだけじゃなく、お前にまで言われたら本当に頭おかしくなりそうなんだよ」
その理論が本当に納得出来ない。母さんに続き末広までその理論に乗っかってくるとは。末広の場合、原因は絶対俺がああ言ったからだろう、だが、許せるわけではない。ほんとお母さんも末広も凛子もみんなおかしい。
「すまん光」
末広はそう言って、無言のままトイレに向かった。そんなこと言われたら俺が悪いみたいじゃねえか。くそ、どうすりゃ良いんだ。



