光と幽霊の彼女

「おはよう、末広」
「ああ、おはよう」
「大嶺さんおはよー」

 雅子が末広が聞こえてないのを承知で末広に話しかける。返事が来るわけないのによく喋りかけるな。

「昨日はなんかすまん」

 挨拶は早々に末広に謝る。

「どうしたんだ? いきなり」

 末広は不思議そうな顔をした。

「白状するよ、俺には今も雅子が見えているんだ」

 意を決して言い放った。正直言って反応が怖い。また変なやつと思われるのだろうか。

 今お母さんがおかしい今、末広しか頼りにならない。こう見えても親友だ。雅子の存在を認めて貰えるかもしれない。

「お前、まだ現実が見えてないのか」

 そう言われてしまった。昨日の母さんとの件があるし、そう言われることは十分覚悟していた。だが、覚悟していても実際言われるとやはりキツイ。

「見えてるよ、見えてるからこそ雅子が見えてるって言っているんだ」

 だが、そんな気持ちを振り払って、さらに言う。現実が見えているかと言われたら難しいところだが、まずは雅子が見えてることを認めて貰えないと。

「お前な、そんなこと言ったって雅子は帰ってこないぞ」

 まずい、まただ、またこれだ。雅子が見えてることを理解してもらえない。トラウマが再来してしまう。

「まあそんなこと言われるのは覚悟していたよ。でも雅子がここにいるという事実を捻じ曲げるわけにはいかないんだ。信じてくれ末広」

 俺は事実を言っているだけなのだ。何も悪いことはしていない。

「すまん、それを言い張るなら、なんかそう言う施設行ったほうがいいと思うわ。その施設がどんなんかわからんけどな」

 そう末広は笑いながら言う。こっちは本気なんだがな。

「末広…」

 俺は呟いてみる。だが返事は返ってこない。