「お願い。曲がり角のところでバイバイするから」
「そう言ってバイト先まで付いて来るだろ」
「行かないって。約束する」
「本当だろうな?」
「本当に!」
「約束しろよ。あの辺、治安が悪いし、1人でうろついたりしたら……」
下駄箱の前。靴を履き替える私の隣で蓮くんは不貞腐れた表情でブツブツと呟く。友達と帰ればいいのに、って相変わらず機嫌が悪そうに。
ただ機嫌は悪くても、ちゃんと待ってくれているところをみると、やっぱり本気で嫌がっている訳じゃなさそうだ。
きっと私が1人になるのが心配で仕方ないだけ。それなら最初から友達と一緒に帰って欲しいんだと思う。
だって私バカだし。1人で行動すると直ぐにトラブルに巻き込まれる。
困っている人を助けたつもりが寸借詐欺にあったり、落ちていた財布を届けたら盗んだと疑われたり、道案内をしたら変なところに連れ込まれそうになったり……。
とにかく真っすぐいかない。ややこしい話に発展する。蓮くん曰く“正直者が馬鹿を見る”って言葉そのまま。
正しいことをすれば損をするし、良かれと思って行動したことが全て裏目に出てしまう。おまけに利用されたって自分じゃ全く気付けない。誰かにツッコまれてから初めて気付く始末。
その所為で蓮くんは超が付くほどの心配性になってしまった。顔を合わせると、いつも私の心配をしていつも怒る。ある意味、過保護。
この一見、冷たい蓮くんの態度だって裏を返せば優しさだ。言葉の端々に彼なりの優しさが詰まっている。かなり不器用だし、回りくどいけど。
「曲がり角までな」
「うん」
折れて素直に歩き出した蓮くんと学校の門から出て、通い慣れた道を歩いていく。



