正直者が愛を見る




 「とにかく気を付けろよ」

 「分かった」

 「じゃあな」

 「え、帰っちゃうの?」

 「まぁ。用も済んだし」


 好きな気持ちでいっぱいになっている中、いきなり背中を向けられて寂しさが押し寄せる。


 いつものことなのに、いつもとは何だか違う気持ち。 しかし、蓮くんは振り返らずにマンションに戻っていく。


 「待って!」


 寂しくなって思わず呼び止めてしまった。一緒に居たい気持ちが溢れて止まらない。


 怒るかなと思ったけど、蓮くんはいつもと変わらない顔で振り向いた。「何?」って。
 

 何となく振り向いてくれないと思っていたからビックリ。願いが叶ったような不思議な心境に陥る。
 


 「えーっと。忙しい?」

 「なんで?」

 「まだ一緒に居たいな、と思って……」

 「ふーん」

 「ダメ?」

 「いや。いい。どうせなら、どっかに出掛けよう」

 「え、いいの?」

 「あぁ。別に予定もないし」


 てっきり拒否られると思っていたのに普通に頷かれてしまった。思わず目が点。
 

信じられなくて固まった私に蓮くんは「なんで驚いてんの?」と鼻で小さく笑った。相変わらず背中は向けられたけど、着替えに帰るから付いて来いと急かされ慌てて駆け寄る。