「蓮くん?どうしたの?」
「はぁ?お前はバカか。お人好しなのもいい加減にしろ」
キョトンと首を傾げた私に蓮くんは不満そうな表情を向けてくる。
どうやら怒っているらしい。お説教を始めようとしている。しかし、思うことがあったみたいで直ぐに視線を私からお爺さんに移した。
「おい、爺さん」
「何だね?」
「さっき右ポケットに何か隠しただろ」
「さぁ…。何のことかな?」
「惚けるな。鞄から財布を抜いてるのが俺の家から丸見えだったんだよ」
「おや?」
「どうせスったところで、こいつの財布には大した金額が入ってないんだから。早く返せ」
落ち着いた態度のお爺さんに蓮くんが真顔で詰め寄る。全く一歩も譲らない勢い。
そんなまさか、お爺さんが私の財布を?またまたー。そんなはず……と思って鞄の中を覗いたら本当に財布がなくなってた。信じられない気持ちでパッとお爺さんに顔を向ける。
「やれやれ。バレてしまったか」
「う、嘘……」
「イケると思ったのに。残念じゃのぅ」
あっさりと犯行を認められ、唖然とする。すると、お爺さんは取り出した私の財布をベンチに置き「すまん」と悪戯っ子みたいに舌を出して笑った。
そのまま「またの~」なんて楽しげに言いながら、最初の杖をついてヨボヨボしてた姿はドコへやら軽快な足取りで去っていく。



