「茜、何食べる?」
「んー⋯⋯ナゲットと、オレオのやつも食べようかな」
「あれうまいよなー」
「おれテリヤキとポテト〜」と織田さんに伝えているコーダイは、心無しかテンションが高い。
ドライブスルーで織田さんが注文を伝えているときから、私は座席の影に隠れていた。
「ありがとね、気遣ってくれて」
「⋯⋯見つかったら大変だし」
「そんなことねえと思うけどな、ただのバンドマンだし」
「自分の人気舐めてちゃだめだよ」
「ふは、おれそんな人気?」
「意味のない謙遜しないで」
「ゴメンナサイ」
何を今更。
この男に熱狂的な女性ファンがたくさんついているのは周知の事実だ。
織田さんから袋を受け取ると、食欲をそそる匂いが車内に充満する。
「もう袋すらうまそうだもんな」
「ふ、たしかに」
「いただきまーす」
「ありがとうございます、いただきます」
「どーぞどーぞ」
久しぶりに食べたナゲットは相変わらずおいしかった。
