「……前に言ったよ」
熱が籠った頬をかくすみたいに、ぎゅ、とゆるい力をこめた腕をきりくんの首に絡めて、耳元にくちびるを寄せる。
『……あげる。きりくんに、……ぜんぶ』
────だから、もう少しだけ傍にいて
……ううん、そうじゃなくて。
至近距離で涅色の瞳にピントを合わせると、無意識にも頬がゆるむ。腕を絡めたまま、襟足の部分に手を這わせてそっと撫でれば、ふわりと柔らかい。
空気に揺れて控えめに跳ねる猫っ毛にふれながら、ちいさく微笑んで。
「……隣、いてね」
腕をゆっくり引き寄せて、自分からくちびるを重ねた。
「、ふ。ズレたね」
「……はじめてだから、大目にみてほしい……」
「おれも初めて」
「……なに、っ!」
両頬を包まれて、そっと落とされたキス。
温もりを溶けあわせるみたいなそれは、今までのどんなキスよりもあたたかいのに。
「────他人にやさしくしたい、って思ったの」
それと同じくらい切なく響いて、無性に泣きなくなってしまった。



