nonsense magic





「……いい表情」



見惚れてしまうほどにうつくしくて、魅惑的で、簡単に呑み込まれてしまう。ゆったりと細められたそれがどこか歪んでいるように感じるのは、きっと気のせいじゃない。


顔の輪郭がだんだんとぼやけていく。ぽろぽろ頬を伝う雫がくちびるの横を垂れて、顎先を伝ってきりくんのスウェットにシミをつくる。



『こころにはふわふわ笑っててほしい』

──────……うそつき



「……きりくん、趣味わるい、」

「ね、自覚はある」

「……わたしとこんなことして、おもしろい?」


''誰でもいい''という括りのなかに、わたしも含まれていたの?でも、女の子とふれあうことに慣れているきりくんの相手が、わたしに務まるとも思えない。



『………───ないんだよ、お前』

自分の身勝手さに、醜さに、絶望したあの日。簡単にひとを傷つけてしまう自分に嫌気が差して、もう、なにもかも投げ出してしまいたくて、それで────



「ほんと、おまえは何も自覚ないね」

「……自覚、あるから聞いてるの。多分、きりくんが知ってる女の子みたいにできないよ、」


すると、呆れたように冷めた瞬きが落とされる。ふわり、静かに揺れる睫毛が白い頬に影をつくるのを眺めていたら、ふと、艶めく瞳に妖しい色が宿った気がして、肩が揺れた。



「……こんな時に余所見?」

「よ、よそみなんてしてな、……っんぅ、」


ぐっ、と頭を手のひらでかき抱くように引き寄せられて、貪るみたいに深く奪われる。


くちびるの表面をなぞるように舌を這わされて、意図的につくられた小さな隙間から侵入したそれが、わたしのを簡単に捕まえる。


耳を塞ぎたくなるような水音を立てて絡まって、口内の奥、もっと奥と言わんばかりに舌を深く埋められて、その息苦しさから生理的な涙が浮かぶ。