「……どーも、彼氏です?」
「…~っも、きりくんわざと…?」
「さあ」
悪戯を含ませた薄笑いで、下から掬い上げるように見つめてくる。余裕を浮かせた瞳の温度に、ひとりテンパっている自分が恥ずかしくなって、視界を妨げるように試着室のカーテンを閉めた。
……だめだ、わたしときりくんの経験値に差がありすぎる……。
「……っ、」
個室のなか、振り向き様に鏡に映った自分の弱々しい表情も、じんわりと熱をもつ頬も、不規則な胸の高鳴りも、すべてに余裕がない自分が恥ずかしい。
きりくんの''かわいい''なんて、いつもは軽く流せるはずなのに。
「あ、拗ねた」
「……すねてない……」
「機嫌直して、こころ」
ぎゅう、と強くカーテンを握ったはずみに生まれた皺を親指でなぞると、不意に重ねられたひんやりとした温度。
布越しで指先を掠めるように撫でたそれは、ぎゅ、とやわい力をこめてくる。宥めるように温度を重ねられて、絡められて、そのままスライドさせるように開かれるカーテン。
……と。
ゆるり、背中に回された片腕に引き寄せられ、ぽすっときりくんの胸に顔があたる。
……乱れた横髪を丁寧に耳に掛けると、ふれる寸前、ぎりぎりまでくちびるを寄せてくる。鼓膜に感じる吐息とダイレクトに流し込まれる体温に、心臓がちいさく疼いて、身動きが取れない。
そうして、ぼそり、呟かれた一言。
「─────……っ、ばか」
『''かわいい''』



