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3分ほど経った頃。
着替えを終えたわたしは、そうっと、なるべる音を立てないように試着室のカーテンを開いた、……のに。
「わ~~っ、とってもお似合いです……!」
店員さん&きりくんが待ち構えていて、びくうっと大袈裟に肩が揺れる。相変わらずやさしい店員さんにぎこちない笑みを返すけど、隣にいるきりくんのことは、なぜか見ることができない。
でも、せっかくきりくんが選んでくれた服だから、と、覚悟を決めて、上目がちにきりくんを捉えようと顔を上げた瞬間。
「カレシさんもそう思いますよね?!」
…………彼氏、さん?
全く身に覚えのない言葉を頭のなかでリピートさせて、かれしさん、とこころのなかで唱えてみると、……?!となる。
でも確かに、男女ペアで服を選んでいたら、''そう''見えてもおかしくない。……というか、''そう''にしか見えない……?
「うふ、とっても美男美女なおふたりなので!私見惚れちゃいましたよ~!」
「っ、ちが……!」
否定する言葉の隙間を縫うように落とされたのは、ふわ、と、空気に溶け込ませるような、うつくしい笑み。
「…ね。おれの彼女、すげーかわいいんです」
あまやかな声色に、どくん……っと、大きく脈打った心臓。微かに吐息を乱されたまま、壊れたようにきりくんを視界に映せば、試すように細められる涅色の瞳。
────わたしには''彼''の考えていることなんて、ほとんどわからない
「ひゃあ、素敵な彼氏さんですね…!」
「……はい」
「じゃああの私は退散しますので~~ごゆっくりどうぞ!」
そんなセリフを残して、店員さんは颯爽とレジの方へと戻ってしまう。



