nonsense magic







「そのまま。……動かないで」


近距離で感じる息遣いに、ぎゅう、と強く目を瞑る。後れ毛を摘まれながら着ている服の上から"それ"をあてられて、形を合わせるように布が擦れる。


不意に、ふ、と微かに空気が揺れたとき、ちいさな笑みが零された気がした。
 


「、あり、がとう。きりくん」



振り返り、ぺこ、と軽く頭を下げると、きりくんが選んでくれた服に視線を落とす。



Iラインのレースワンピース。ふんわりと繊細さを纏う、透けるようなフラワーデザインのレースと、きゅっと締まったウエストリボンがすごく可愛い。


華やかで大人っぽいデザインだけど派手すぎないところが、すごくわたし好みだ。



「それ、今とっても人気なデザインなんですよ~!」

「あ、そうなんですか……?」

「ホワイトを選ばれる方が多いんですけど、黒もすごくかわいいんですよ~!お客さまみたいに綺麗で雰囲気が大人っぽい方には、ぜったい似合うと思いますっ!」


にこにこ、明るい笑顔で接客してくれる店員さんだから、お世辞だと分かってていてもすこし照れてしまう。



「よかったら、ご試着してみませんか……!」

「っえっと……、は、はい」


顔と顔との距離をぐいっと詰められて、勢いはんぶんで頷いてしまった。


あ、でも、きりくん疲れてる……。



「おれのことは気にしないで。折角だし、してきな?」

「…うん、ありがとう。でも、待ってる時間暇だとおもうし、きりくん疲れてるし、外のベンチ座ってて……!」


連れ回して、服まで選んでもらって、きりくんはその間ずっと立ちっぱなし。せめて休養を取ってほしい、と、きりくんをじっと見つめれば、首を横に振られる。


「こころがあの服着てるとこ見たいから、ここで待ってる」

「……え、えぇ…」


 
だめ?なんて首をかしげられたら、わたしになす術なんてあるわけない。


────……き、きりくんがあざとい……。